『太陽にほえろ!』が放映開始10周年だった1982年(て事はもう、30年前の話ですねw)、それはまさに激動の1年でした。
スコッチ(沖雅也)、ロッキー(木之元亮)、長さん(下川辰平)、そしてゴリさん(竜雷太)と、長年に渡って番組を支えて来たレギュラーメンバーが、殉職や転勤という形で相次いで降板されたんです。
そのつど、入れ代わりに新しいメンバーが投入されましたから、結果的には視聴者層も含めて若返り=活性化を果たし、それが無ければ更に5年も番組を継続する事は出来なかったって、今だから思えるけど、当時はかなりショックを受けたものでした。
特にゴリさんは番組を象徴するキャラクターで、『つばさ』で言えば秀樹の退場に匹敵する喪失感がありました。私はそれを機会に番組のファンを辞めるつもりだったし、実際にそれで卒業したファンも多かったみたいです。でも、その少し前に加入したボギー刑事(世良公則)があまりに魅力的で、私は卒業し損ないましたw
なんでこんなこと書いてるかと言えば、まず『つばさ』第23週で愛すべきキャラ達が次々と去っていく、この衝撃と喪失感が、『太陽』10周年の時に味わった思いを彷彿させてくれた事。
それともう一つ、去っていく面々の心情です。『太陽』の場合、ドラマ上では無念の死だったり、未練たっぷりな転出だったりしましたけど、演じる役者さんにとっては「卒業」であり、ステップアップに繋がる「巣立ち」だったんですよね。
後年になって明かされた事ですが、番組スタート時からずっと出演されてたレギュラー俳優さん達は、5年を過ぎた頃からプロデューサー氏に「今年こそ殉職させて下さい!」って、毎年のように(たぶん契約更新の会合で)懇願されてたそうです。泣く泣く降ろされたんじゃなくて、もう降りたくて降りたくて仕方が無かったワケですねw
何年も続く人気番組にレギュラー出演していれば、生活は安定するしギャラも上がって行くし、現場の勝手も知り尽くして、チームの雰囲気も本当に良かったみたいですから、ずっと続けた方がラクで居心地良いに決まってます。
そこが役者と、バラエティー番組の司会者との大きな違いですね。役者の場合、一つのイメージが定着し過ぎるのはデメリットになるし、何より自分が向上出来なくなるのが、本当に辛いんだろうと思います。新しい役にチャレンジしなければ、向上はあり得ません。
とは言え、10カ月間の撮影だった『つばさ』のレギュラー陣が、終わって胸にポッカリ穴が開いたような淋しさから、永らくぬけ出せなかったと語られてるのに、ゴリさんや長さんは10年間ですからね! 家族といるよりもずっと長い時間を過ごした現場を去るワケですから、その喪失感たるや想像を絶するものがあった事でしょう。
でも、そのまま居座れば、自分が駄目になってしまう。どうしても「必要なお別れ」であり、しごく前向きな決断だったに違いありません。辛いけど、晴れやかなお別れ。
またまた前置きが長くなっちゃいましたがw、第23週はまさに、それを描いたエピソードでした。
☆見るべき程のことは、見つ。
「川越チャレンジ」の成功により、ラジオぽてとが再び脚光を浴び、市民パーソナリティーの応募も激増、これで安泰かと思われたのですが…
局長の真瀬(宅間孝行)を筆頭に、経理の伸子(松本明子)、元芸人のレポーター・ロナウ二郎(脇知弘)、音楽担当の浪岡正太郎(ROLLY)、そしてつばさ。開局から共に頑張って来た、この5人の力があってこそのラジオぽてと、なのですが…
波乱は、伸子の「給料を上げて欲しい」ってな要望から幕を開けます。真瀬としては「お金がない」の一言で却下するほか無いのですが、息子の隼人くんが中学受験を控えてる伸子にとっては切実な問題です。
その上、実は伸子に転職の話が来てると知り、つばさは動揺します。給料面でずっと条件が良いらしく、伸子は明らかに迷ってる様子。
一方、斎藤興業においても、秀樹(不在中)の部下コンビが情報誌片手に職探し中で、「あからさま過ぎますよ」と翔太(タニオ・チクビッティー)が頭皮と乳首を交互に動かしながら、たしなめます。
でもそれは、ここんとこ元気のない秀樹を、奮起させたい思いがあっての事だと聞いて、頭皮のみ一時停止させる翔太。そんな器用なチクビッティーから、町の実力者・城之内房子が川越キネマの土地を狙ってる事実を聞かされ、つばさの胸もザワつきます。
そして、悪い予感は的中します。伸子が退職願いを真瀬に提出するのですが、その転職先はなんと、城之内エンタープライズ。房子様の会社だったのです。房子様が直々に声を掛けて来たらしく、これには何か、良からぬ策略があるのでしょう。
メンバー全員が大ショックのラジオぽてとに、秀樹がチクビッティーを連れて現れ、さらに追い打ちをかけます。
「この町を出ていく事にした」
せっかくラジオぽてとが「皆が集まる広場」になったのに それは秀樹の夢だった筈なのに!と、つばさは抗議しますが…
「見るべき程のことは、見つ」
『平家物語』に出てくるフレーズなんだそうで、この世のことは全て見た、もう心残りは無いって、秀樹は言ってるのです。
ラジオぽてとが理想的な広場になったからこそ、出ていく。目的を果たした今、秀樹には川越にいる意味が無くなってしまった。
あるいは、竹雄との愛を確固たるものにした加乃子を心から祝福しながら、一方じゃ傍で見てるのが辛いのかも知れません。
かと言って、あきらかに秀樹のアプローチを待ち望んでる、しかも和製マリリン・モンローなボインボイイ〜ン麻子さんの想いにも、あえて背を向けちゃう秀樹って、誰よりも寅さんに近いキャラですよね?
惚れっぽいけど、一度惚れた相手には一途。人を幸せにするのが大好きで、だけど自分自身には幸せになる資格が無い、と思ってる節がある。「ま、ブラジルにでも行くさ」なんて言う姿も、まさに寅さんを彷彿させます。
☆心残り
秀樹の旅立ちが近づいても、加乃子は意に介さない…ふりをしてます。この人もまた、一貫してそういうキャラですよね。
知秋が送別会を提案しても「いいわよ、そういうの。かえって恐縮しちゃうタイプだから」なんて言ってる加乃子が、夫・竹雄は気になる様子。
一方、城之内エンタープライズ。バリバリと秘書の仕事をこなす伸子を、気に入ったご様子の房子様…に見えますが、「ま、本当に役に立ってもらうのは、これからだけど」なんて言って、怪しいにも程があるw
この城之内房子という人には、凄味があります。どんな非道な事でもやっちゃいそうだし、それによって恨みを買う事に対しても、平気と言うより、覚悟を持ってる感じがします。
この人と秀樹が対峙する場面は、本物のワルどうし、さながら頂上対決みたいな迫力と緊張感がありました。どんな生い立ちを歩んで来られたのか、興味深いです。
その頃、ラジオぽてとでは… ロナウ二郎の元相方・ベッカム一郎が傷害容疑で身柄拘束されたとのニュースが舞い込み、波乱がまた波乱を呼ぶ予感…
一郎はしつこく付きまとうパパラッチを殴ったらしく、芸能活動を無期限謹慎になった模様で、二郎は動揺を隠せません。
竹雄は、麻子さんの店に秀樹を呼び出します。出ていく前に加乃子と一度会って欲しい、と伝える為に。
「何か想いを残すような事は、して欲しくないんです」
そう言う竹雄の気持ちは、よく解ります。加乃子と秀樹の間に未練が少しでも残ったら、誰よりも竹雄自身の胸に、しこりが残ってしまう事でしょう。
でも秀樹は「気遣いは無用だ」と、素直には受けません。「見るべき程のことは見つ」…またそんな事を言う秀樹ですが、本当にそうなのか?
秀樹にも何か心残りがある筈だ、と言う竹雄の言葉を聞いて、つばさが思い出します。秀樹がラジオぽてとに肩入れしたのは、かつて加乃子がDJになりたがってたから、だという事を。
「いつか、その夢を叶えてやる」と秀樹は言ってたけど、加乃子は甘玉堂の女将になる決意を表明しており、DJの夢はとっくに諦めた…って言うか、忘れてる。
はげちゃびーん!! 竹雄は閃きます。
☆さらなる別れの予感
浪岡正太郎が、甘玉堂の千代さんを訪ねて来ます。父・葛城から手紙が届いたと言うのです。
「お前はお前の道を行け」
その一言しか書かれてない文面から、いよいよ葛城の人生が終わりに近づいてる事が伺えます。
今でも葛城を愛してる千代さんは、父の元に戻ってあげて欲しいと正太郎に懇願します。それは単なる里帰りではなく、正太郎が家業を継ぐ=ラジオぽてとを去ってしまう事を意味します。
一度は実家を捨てた正太郎ですが、今は迷ってる様子。まさか、伸子に続いて正太郎まで…!?
一方、ラジオぽてとでは、伸子の後釜にベッカム一郎はどうか?と、二郎が提案します。警察沙汰を起こした一郎を受け入れる事には、少なからずリスクが伴う。簡単に承諾は出来ない真瀬ですが…
「今、あいつを守ってやれるのは、此処しか無いから…」
そんな二郎の熱き想いに、真瀬も首を縦に振るしかありません。…が、そんな彼らの優しさが、ラジオぽてとを更なる窮地に追い込んでしまう事を、つばさは予測出来なかったのでした。(つづく)
スコッチ(沖雅也)、ロッキー(木之元亮)、長さん(下川辰平)、そしてゴリさん(竜雷太)と、長年に渡って番組を支えて来たレギュラーメンバーが、殉職や転勤という形で相次いで降板されたんです。
そのつど、入れ代わりに新しいメンバーが投入されましたから、結果的には視聴者層も含めて若返り=活性化を果たし、それが無ければ更に5年も番組を継続する事は出来なかったって、今だから思えるけど、当時はかなりショックを受けたものでした。
特にゴリさんは番組を象徴するキャラクターで、『つばさ』で言えば秀樹の退場に匹敵する喪失感がありました。私はそれを機会に番組のファンを辞めるつもりだったし、実際にそれで卒業したファンも多かったみたいです。でも、その少し前に加入したボギー刑事(世良公則)があまりに魅力的で、私は卒業し損ないましたw
なんでこんなこと書いてるかと言えば、まず『つばさ』第23週で愛すべきキャラ達が次々と去っていく、この衝撃と喪失感が、『太陽』10周年の時に味わった思いを彷彿させてくれた事。
それともう一つ、去っていく面々の心情です。『太陽』の場合、ドラマ上では無念の死だったり、未練たっぷりな転出だったりしましたけど、演じる役者さんにとっては「卒業」であり、ステップアップに繋がる「巣立ち」だったんですよね。
後年になって明かされた事ですが、番組スタート時からずっと出演されてたレギュラー俳優さん達は、5年を過ぎた頃からプロデューサー氏に「今年こそ殉職させて下さい!」って、毎年のように(たぶん契約更新の会合で)懇願されてたそうです。泣く泣く降ろされたんじゃなくて、もう降りたくて降りたくて仕方が無かったワケですねw
何年も続く人気番組にレギュラー出演していれば、生活は安定するしギャラも上がって行くし、現場の勝手も知り尽くして、チームの雰囲気も本当に良かったみたいですから、ずっと続けた方がラクで居心地良いに決まってます。
そこが役者と、バラエティー番組の司会者との大きな違いですね。役者の場合、一つのイメージが定着し過ぎるのはデメリットになるし、何より自分が向上出来なくなるのが、本当に辛いんだろうと思います。新しい役にチャレンジしなければ、向上はあり得ません。
とは言え、10カ月間の撮影だった『つばさ』のレギュラー陣が、終わって胸にポッカリ穴が開いたような淋しさから、永らくぬけ出せなかったと語られてるのに、ゴリさんや長さんは10年間ですからね! 家族といるよりもずっと長い時間を過ごした現場を去るワケですから、その喪失感たるや想像を絶するものがあった事でしょう。
でも、そのまま居座れば、自分が駄目になってしまう。どうしても「必要なお別れ」であり、しごく前向きな決断だったに違いありません。辛いけど、晴れやかなお別れ。
またまた前置きが長くなっちゃいましたがw、第23週はまさに、それを描いたエピソードでした。
☆見るべき程のことは、見つ。
「川越チャレンジ」の成功により、ラジオぽてとが再び脚光を浴び、市民パーソナリティーの応募も激増、これで安泰かと思われたのですが…
局長の真瀬(宅間孝行)を筆頭に、経理の伸子(松本明子)、元芸人のレポーター・ロナウ二郎(脇知弘)、音楽担当の浪岡正太郎(ROLLY)、そしてつばさ。開局から共に頑張って来た、この5人の力があってこそのラジオぽてと、なのですが…
波乱は、伸子の「給料を上げて欲しい」ってな要望から幕を開けます。真瀬としては「お金がない」の一言で却下するほか無いのですが、息子の隼人くんが中学受験を控えてる伸子にとっては切実な問題です。
その上、実は伸子に転職の話が来てると知り、つばさは動揺します。給料面でずっと条件が良いらしく、伸子は明らかに迷ってる様子。
一方、斎藤興業においても、秀樹(不在中)の部下コンビが情報誌片手に職探し中で、「あからさま過ぎますよ」と翔太(タニオ・チクビッティー)が頭皮と乳首を交互に動かしながら、たしなめます。
でもそれは、ここんとこ元気のない秀樹を、奮起させたい思いがあっての事だと聞いて、頭皮のみ一時停止させる翔太。そんな器用なチクビッティーから、町の実力者・城之内房子が川越キネマの土地を狙ってる事実を聞かされ、つばさの胸もザワつきます。
そして、悪い予感は的中します。伸子が退職願いを真瀬に提出するのですが、その転職先はなんと、城之内エンタープライズ。房子様の会社だったのです。房子様が直々に声を掛けて来たらしく、これには何か、良からぬ策略があるのでしょう。
メンバー全員が大ショックのラジオぽてとに、秀樹がチクビッティーを連れて現れ、さらに追い打ちをかけます。
「この町を出ていく事にした」
せっかくラジオぽてとが「皆が集まる広場」になったのに それは秀樹の夢だった筈なのに!と、つばさは抗議しますが…
「見るべき程のことは、見つ」
『平家物語』に出てくるフレーズなんだそうで、この世のことは全て見た、もう心残りは無いって、秀樹は言ってるのです。
ラジオぽてとが理想的な広場になったからこそ、出ていく。目的を果たした今、秀樹には川越にいる意味が無くなってしまった。
あるいは、竹雄との愛を確固たるものにした加乃子を心から祝福しながら、一方じゃ傍で見てるのが辛いのかも知れません。
かと言って、あきらかに秀樹のアプローチを待ち望んでる、しかも和製マリリン・モンローなボインボイイ〜ン麻子さんの想いにも、あえて背を向けちゃう秀樹って、誰よりも寅さんに近いキャラですよね?
惚れっぽいけど、一度惚れた相手には一途。人を幸せにするのが大好きで、だけど自分自身には幸せになる資格が無い、と思ってる節がある。「ま、ブラジルにでも行くさ」なんて言う姿も、まさに寅さんを彷彿させます。
☆心残り
秀樹の旅立ちが近づいても、加乃子は意に介さない…ふりをしてます。この人もまた、一貫してそういうキャラですよね。
知秋が送別会を提案しても「いいわよ、そういうの。かえって恐縮しちゃうタイプだから」なんて言ってる加乃子が、夫・竹雄は気になる様子。
一方、城之内エンタープライズ。バリバリと秘書の仕事をこなす伸子を、気に入ったご様子の房子様…に見えますが、「ま、本当に役に立ってもらうのは、これからだけど」なんて言って、怪しいにも程があるw
この城之内房子という人には、凄味があります。どんな非道な事でもやっちゃいそうだし、それによって恨みを買う事に対しても、平気と言うより、覚悟を持ってる感じがします。
この人と秀樹が対峙する場面は、本物のワルどうし、さながら頂上対決みたいな迫力と緊張感がありました。どんな生い立ちを歩んで来られたのか、興味深いです。
その頃、ラジオぽてとでは… ロナウ二郎の元相方・ベッカム一郎が傷害容疑で身柄拘束されたとのニュースが舞い込み、波乱がまた波乱を呼ぶ予感…
一郎はしつこく付きまとうパパラッチを殴ったらしく、芸能活動を無期限謹慎になった模様で、二郎は動揺を隠せません。
竹雄は、麻子さんの店に秀樹を呼び出します。出ていく前に加乃子と一度会って欲しい、と伝える為に。
「何か想いを残すような事は、して欲しくないんです」
そう言う竹雄の気持ちは、よく解ります。加乃子と秀樹の間に未練が少しでも残ったら、誰よりも竹雄自身の胸に、しこりが残ってしまう事でしょう。
でも秀樹は「気遣いは無用だ」と、素直には受けません。「見るべき程のことは見つ」…またそんな事を言う秀樹ですが、本当にそうなのか?
秀樹にも何か心残りがある筈だ、と言う竹雄の言葉を聞いて、つばさが思い出します。秀樹がラジオぽてとに肩入れしたのは、かつて加乃子がDJになりたがってたから、だという事を。
「いつか、その夢を叶えてやる」と秀樹は言ってたけど、加乃子は甘玉堂の女将になる決意を表明しており、DJの夢はとっくに諦めた…って言うか、忘れてる。
はげちゃびーん!! 竹雄は閃きます。
☆さらなる別れの予感
浪岡正太郎が、甘玉堂の千代さんを訪ねて来ます。父・葛城から手紙が届いたと言うのです。
「お前はお前の道を行け」
その一言しか書かれてない文面から、いよいよ葛城の人生が終わりに近づいてる事が伺えます。
今でも葛城を愛してる千代さんは、父の元に戻ってあげて欲しいと正太郎に懇願します。それは単なる里帰りではなく、正太郎が家業を継ぐ=ラジオぽてとを去ってしまう事を意味します。
一度は実家を捨てた正太郎ですが、今は迷ってる様子。まさか、伸子に続いて正太郎まで…!?
一方、ラジオぽてとでは、伸子の後釜にベッカム一郎はどうか?と、二郎が提案します。警察沙汰を起こした一郎を受け入れる事には、少なからずリスクが伴う。簡単に承諾は出来ない真瀬ですが…
「今、あいつを守ってやれるのは、此処しか無いから…」
そんな二郎の熱き想いに、真瀬も首を縦に振るしかありません。…が、そんな彼らの優しさが、ラジオぽてとを更なる窮地に追い込んでしまう事を、つばさは予測出来なかったのでした。(つづく)