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『妖怪人間ベム』(終)

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とりあえず…

「なにがクリスマスだ!!」(by ゲイリー・ビジー)

↑映画史上、私が最も共感した台詞ですw

さて『妖怪人間ベム』最終回、ご覧になった方の評価は、如何なものだったでしょうか? お化け番組『家政婦のミタ』の陰に隠れちゃった印象もありますが、私は『ミタ』の最終回より、こっちの方が良かったかも知れません。

前半、やけにまったりしてて、最終回なのに大丈夫かいな?って思いながら観てましたけど、最後にお別れが待ってる事の前振りだったみたいですね。

拳銃を持った武装強盗の登場にゲンナリされた方もおられるかもですが、そこはまぁ、妖怪人間が存在する世界ですからw

第1話の冒頭にもあんな連中が出てきたと思いますが、対比になってたりするんでしょうか?(あんまり憶えてないw)

大勢の市民と、お馴染みのレギュラー陣が全員揃ってる前で、彼らを強盗一味から守るために、すごく切なそうにベム達が変身する場面あたりから、久々に『ベム』で泣きました。

夏目刑事以外の人達に正体を晒してしまう事はすなわち、この町にはいられなくなる事を意味します。

さらに、自分達がこうして変身しない限り… つまり、もし人間になってしまったら、こうしてみんなを守ってあげられなくなる事を、この時あらためてベム達は、思い知ったのだろうと思います。

「生きていくのが、苦しくなる事もあるだろう。そんな時、人間は悪の心を持ってしまう。だが、それに抗い、必死に生きていこうと出来るのが人間だ。…投げ出さないでくれないか? 人間であることを!」

…そんなベムの決め台詞が、今回ばかりは虚しくて、ただただ切なかったです。いくら改心させても、悪に走ってしまう人間は後を絶たない。全ての人間には、善と共に必ず、悪の心が宿っているのだから。

ベム達には善の心しか存在しないから、今まではそれが理解出来ず、ただ「なぜなんだ!?」って怒るだけだったけど、悪の心があってこそ「人間」である事を知ってしまった今は、絶望感のレベルがまるで違う。

私だったら「人間は破滅なんです(笑)」とか言って、もう人間の事なんか見放すか、名無し男を受け入れて自分も人間になり、余生をテキトーに楽しむだろうと思います。

でも、ベム達にはそれが出来ない。キカイダーの良心回路みたいなもんで、彼らには善の心しか無いもんだから、人間を見捨てる事が絶対に出来ないんです。(だから、死ぬ事も許されない)

『妖怪人間ベム』は、どう転んでもやっぱり悲劇なんですよね。「人間になりたい!」っていう、たった一つの夢すら、彼らは捨てる事しか選択出来ないんです。人間を守るために。彼らの姿を見ただけで悲鳴を上げて逃げていく、人間達のために!(涙)

「同情しますよ。あなた方を待ち構えてる未来を思うと… 私は、幸せだ。ようやく、死ねる」

ベムにとどめを刺された名無し男は、本当にそれを待ち望んでたみたいです。わざわざベム達の前で、妖怪人間の殺し方を夏目刑事に伝授してたし…

名無し男は、淋しかったんだろうと思います。悪の心しか持たない彼だから、誰とも心を通わせる事が出来ず、せめて自分と同じように悪に取り憑かれた人間を増やす事で、孤独感を紛らわせてたのでしょう。

だから、ベム達との合体を、彼は高圧的に迫るのではなく、懇願してるように見えたし、断られて本当に淋しそうでした。そこはさすがの名優・柄本明さんで、名無し男の最期も妙に切なくて、ぐっと来ました。

悪の心しか持たなくても、孤独には耐えられなかった。もし、ベロとベラが存在してなくて、善の妖怪人間がベム一人しかいなかったとしたら… さすがのベムも、名無し男を受け入れたかも知れませんね。

孤独なまま永遠に生き続ける事に耐えられる人間は(妖怪であっても)、いないでしょうから。

しかし、家族みたいな仲間との絆があっても、人間という存在がある限り、彼らは悪の心と闘い続けないといけない。それで彼ら自身が報われる可能性は、ほとんどゼロに近いっていうのに… まさに、悲劇です。

『ミタ』は何だかんだ言っても、ポジティブな人間讃歌でした。創り手は人間の善を信じて、ヒロインに希望を与えてました。

『ベム』の創り手は、人間から悪の心は絶対に無くならないし、善は苦しくて切なくて報われなくて、だからこそ尊いんだって、そう言ってると私は解釈しました。

まぁ、どうせ破滅なんですが(笑)、私は『ベム』の発するメッセージに強く共感しました。

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