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『つばさ』20

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犯してしまった過ちとか、つらい事から逃げたとしても、必ずツケは回って来る。逃げれば逃げるほど、そのツケは大きくなってしまう。誰しも一度や二度は味わい、現在も抱えてるかも知れない、普遍的な教訓であろうと思います。

基本的に人の優しさが引き起こしちゃう悲劇が多い『つばさ』の中で、今週の竹雄さんは自らの過ちが原因であり、それを自ら引っ張りだして拡大させちゃった、究極の一人相撲とも言える悲劇です。

そもそも妻・加乃子の愛に疑問を抱き始めてから、色んな事の積み重ねで、精神的に追い詰められてた状況が悲劇のお膳立てをしてるのが、モミアゲ乳首の悲劇にもよく似てます。真の一人相撲チャンピオンは、竹雄さんかも知れません。

☆ズボッとしたダボン
ラジオぽてとを川越市民の広場にすべく、つばさは市民パーソナリティーを募り、その第1期生に講習会を開いたりして、やる気満々です。

その生徒の一人である宇津木ママ(広岡由里子)が披露する、伸子(松本明子)のモノマネが恐ろしいほど似てましたねw 芸達者やなぁ…

そこで「男は昔の話をするとテンションが上がる」と知ったつばさは、最近元気が無くて、夕食も毎晩「こえど」で済まして来る父・竹雄をラジオに出演させ、昔話を語らせて元気になってもらおう!と目論むのですが…

優しさゆえのつばさの提案を、優しさゆえに引き受けちゃう竹雄ですが、元極道である過去を知られるのを恐れるあまり、しどろもどろなトークで醜態を晒す結果に終わります。

☆不安が追いかけて来る
竹雄が元極道である事を知ってるのは、玉木家では妻・加乃子だけですが、今の竹雄は加乃子の愛を見失った状態です。

秘密を知るもう一人の人物=元極道の父親を持つボインボイ〜ンの麻子さんだけが唯一、竹雄のオアシスです。だから毎晩のように「こえど」に入り浸ってしまうのでした。

「不安で落ち着かないんですよね、いつか壊れるんじゃないかって」

罪を隠したり過去を偽ったりしてる限り、いくら幸せであっても不安が消える事はありません。今の幸せを誰かに壊される位だったら、その前に自分でいっそ…という衝動を実行しちゃったのが、麻子さんなのでした。ボイ〜ン!

こうして現実逃避すればするほど、不思議と現実は追いかけて来る。帰ろうとした竹雄は、鞄に鈴のキーホルダーを付けた中年男を見かけて愕然となり、店を出るに出られなくなっちゃいます。はげちゃびーん!

「なんで今頃、あいつ…」
☆浮気疑惑
竹雄はそのまま酔いつぶれ、朝帰りする事になるのですが、早朝こっそり「こえど」を出る現場をご近所さんに目撃され、浮気の噂が広まっちゃいます。

それを聞いて誰よりも動揺したのは、やっぱり加乃子でした。竹雄に平気で素っ気ない態度が取れたのも、まさか自分以外の女性に竹雄がなびく筈が無いと安心しきってたから。そんな加乃子の慢心が竹雄を追い詰め、加乃子自身にもはね返って来た。まさに因果応報です。

配達に出向いた鈴本スーパーでも竹雄は、鈴のキーホルダーを付けたあの男が、なぜか包丁を持ってウロウロ(笑)してるのを目撃し、不安が恐怖へと拡大しちゃいます。

男の正体は、谷村鉄次(及川いぞう)という、竹雄の極道時代の弟分なのでした。

幼少時に家族がバラバラになった、竹雄と似たような生い立ちの鉄次と、血の繋がりを超えた絆を結んでいた竹雄。

なのに、いよいよ本格的なヤクザになる通過儀礼?として「鉄砲玉」の役目を負わされた時、竹雄は怖くなって、一人で逃げてしまった。風の噂では、その身代わりに鉄次が鉄砲玉をやらされたらしい…(誤解なのですが)

きっと鉄次は、竹雄に復讐する為に川越にやって来た。殺される恐怖よりも多分、今の幸せを壊される恐怖で震えが止まらない竹雄に、「寄り掛かって下さっていいんですよ」と、優しく胸を貸す麻子さん。

ふんわりマシュマロみたいなワカパイに顔を埋め、その感触を存分に楽しむ竹雄(うそw)。

☆浮気しました
浮気の真相を確かめに来たつばさに、麻子さんは言います。

「人には、触れられたくない過去だって、あるのよ。消したくても消せない昔の傷に、時間というかさぶたを被せて、生きてる人達がいるの」

そんな竹雄の辛さを理解してあげられる人は今、麻子さんしかいない。その麻子はキッパリ「でも竹雄さんとは何も無いのよ」と浮気を否定したのに、家に戻った竹雄は、「竹ちゃんが浮気なんかするワケないじゃない」と笑う加乃子に、なぜか「浮気しました」と言っちゃうのでした。

「み、認めちゃったよ…」と知秋。

「なにも、子供達の前で!」と千代さん。

それぞれの立場でリアクションが違うのが可笑しいですが、加乃子は「浮気の一つや二つ」と相変わらず強がります。

竹雄はきっと、家族には閉ざしてる心を麻子さんには開いた事が、実質の浮気だと言いたかったのでしょう。まぁ、ほっぺに残るワカパイの感触がそう言わせた可能性もありますが(うそw)。ボインボイ〜ン!

☆相手の心を開かせる方法
市民パーソナリティーの講習会で、つばさはインタビューの極意を生徒達に説きます。「相手に心を開いてもらうには、まず自分が心を開いて、ぶつかる事です」

そんなつばさを、優しい眼差しで見守る真瀬。つばさが長瀞の旅から戻ってからというもの、真瀬の態度が優し過ぎて、キモイです(うそw)。

さらに真瀬は、本音を引き出すプロとして、なんと谷村鉄次をぽてとに連れて来ます。彼は包丁研ぎ器のセールスマンで、商売道具として包丁を持ち歩いてたのでした。

鉄次が説く「あいづち・オウムの変化球」とはすなわち、相手の言葉に相づちを打ち、オウム返しをし、ここぞというタイミングで変化球を投げるという、セールス・トークの極意。勉強になりますw

その手法を使って鉄次は巧みに、現在のつばさの悩みを聞き出して見せるのでした。

「大丈夫です。人生は元を取るように出来てますから」

つばさはきっと、同じ台詞を誰かから聞いた気がしたんじゃないでしょうか?

「今の苦労は、後々に幸せになる為の先行投資です。不幸も重なりゃ、幸福になる」

いやはや全く、勉強になりますねw

☆似た者夫婦
竹雄がいったい何を悩んでるのか、加乃子は恥をしのんで、麻子に尋ねます。

「加乃子さんには、竹雄さんの過去の重さが解ってない」

ボインボヨヨ〜ン! 自分には解らない夫の気持ちを、よその女性がしっかり理解してる。この第20週は竹雄の試練であると同時に、加乃子にとってもかなり痛い試練であるようです。

「別れてもいいわよ。竹ちゃんがそうしたいんだったら」

加乃子はまたもや、竹雄が一番言って欲しくない言葉を、竹雄に対する優しさゆえに投げかけちゃいます。

「竹ちゃんの行きたい所に行ってくれていい。私、全然構わないんだから」

「…それが本音ですか。分かりました」

そんな二人を見て、ラジオの男は言います。

「不器用で臆病で、思ってる事をうまく伝えられない者どうし、似た者夫婦だよ」

淋しさとか不安を紛らわす為に、心にも無い事を言ったり妙にテンションを上げたりするのが、加乃子なんです。がさつに見えて、実は誰より繊細なのかも知れません。

泣きながら食器を洗う加乃子に、つばさが声を掛けます。

「器用だね。泣くか洗い物するか、どっちかにしたら?」

この台詞はいつぞや、つばさに対して加乃子が言った台詞そのまんまですよね?

失いそうになって初めて、竹雄の存在が自分にとって如何に大きいか思い知った加乃子は、まるで少女のように泣きながら、つばさに抱きつきます。これもいつぞやと逆転の構図ですが、あの時は加乃子が無理矢理つばさに抱きつかせてましたねw

「その気持ち、お父さんにぶつけて。二人の人生の元、取ってよ」

つばさに言われた通り、加乃子はやっと、竹雄に素直な気持ちをぶつけます。

「絶望の一歩手前にいた私に、竹ちゃんが教えてくれたの。人生は元を取るように出来てるって。竹ちゃん、何処にも行かないで。此処にいて!」

鉄次が言ってた人生訓話は、かつて同じように絶望の淵にいた鉄次に、竹雄が言った言葉なのでした。そのお陰で立ち直った鉄次は、まったく竹雄を恨んでなどいないのですが…

☆修羅になった竹雄
その鉄次がつばさのラジオに飛び入り出演してるのを聞いた竹雄は、「つばさが危ない!」とラジオぽてとに乱入、ちょうど包丁をサービスで研いでる鉄次を見て逆上し、今まで誰にも見せなかった、修羅の一面をみんなの前で晒してしまいます(画像)。

鉄次はただ、竹雄がいなくあった後に築いた幸せを、家族写真という形で竹雄に見て貰いたくて、この川越を訪ねて来たのでした。

「今の俺があるのは、ダボンさん(竹雄)のお陰なんじゃ!」

竹雄はやっと、自分がすっかり一人相撲を取ってた事に気づきます。

「俺一人が幸せになったら、申し訳ねぇと思ってた」

家政婦のミタさんみたいな事を言って、涙を流す竹雄。泣きながら抱き合う、頭髪の乏しい二人の中年オヤジw

しかし又、竹雄は気づきます。つい今しがた自分の取った行動や態度が、それを見てた家族や友人達に、取り返しがつかないほど大きな衝撃を与えてしまった事に… はげちゃびーん! つるっ!

☆幸せでした…
もう川越にはいられないと言う竹雄に、加乃子が「出て行かないで、竹ちゃん!」と泣いてすがりつきます。これもまた、いつぞやと逆転の構図ですね。加乃子にも色んなツケが回って来たのでしょう。

でも、一番拒否反応を示すであろうと思われた千代さんは、実はずっと以前から竹雄の過去は察してたようです。先代(夫であった梅吉)が決めた事だからと、千代さんは黙認するしか無かった。

「でも、それが間違ってなかった事を、あなたはこの26年をかけて示してくれました」

店の伝統を守る事ばかりに固執してるように見えた千代さんが、実は誰よりも竹雄を理解していたのかも知れません。

「あなたは甘玉堂の誇りです。でも、ここで投げ出したら、なんにも残りませんよ」

千代さんの言葉に、竹雄は救われました。が、愛すべきキャラをこれだけ痛めつけたら、まぁ並みのドラマだったらこの辺で許してあげるところでしょうけど、『つばさ』の場合、そうは問屋は卸さない事を我々は知っていますw

竹雄が起こした乱闘騒ぎはやがて、「ラジオぽてとに恨みを持つ男が包丁を持って暴れた」という噂となって町内に広まり、つばさがせっかく集め、育てた市民パーソナリティー達のキャンセルが相次ぐという結果を招いてしまいます。

さらに「甘玉堂に恨みを持つ男が…(以下同文)」という噂が、顧客離れをも招いてしまいます。それだけでも、竹雄を再び追い詰めるには充分な材料なのですが…

噂を聞いた鳶の頭=宇津木パパが、心配して「何があっても俺はタケの味方だからよ」という竹雄への伝言を玉木家に伝えに来て、つい余計な言葉を付け加えちゃうのでした。

「だけどよ、あんな怖いタケの姿は、出来れば見たくなかったよなぁ」

一番の親友のそんな言葉を、物陰で聞いてしまった竹雄が、泣くでもなく怒るでもなく、ただ静かにうなだれる姿が切な過ぎて、今週で一番泣かされちゃいました。

翌朝、「幸せでした」と一言書いた置き手紙を残し、竹雄は姿を消したのでした。

PS. 遡れば、こうなってしまった原因は数え切れないぐらい挙げられます。加乃子との数々のすれ違いもさる事ながら、麻子の父の末路を見てしまったのも、大きな伏線になった事でしょう。

単純に一つの理由やきっかけだけで、悲劇やトラブルは起こらない。本当に些細な事の積み重ねなんですよね。それをこれほど詳細に、丁寧に描いて見せたドラマを、この『つばさ』以外に私は観た記憶がありません。

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