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『つばさ』19 (前)

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この週からタイトルバックが変わりましたね。使われてるスチール写真の7〜8割が差し替えられ、前より明るく華やかになった気がします。

本編中のつばさも、明らかに前より綺麗になって、多部ちゃんの演技も、さりげなく大人っぽい表現に変化したと思われます。つばさはひと皮剥けました。

☆羽ばたきなさい
ラジオぽてと復帰が決まったつばさは、房子様に頭を下げてくれたらしい祖母・千代に礼を言い、長瀞への旅を通じて、自分の夢を見つけるヒントが得られた事を報告します。

でも、それはすなわち、つばさに甘玉堂の女将を継いで欲しいという、千代さんの夢からは遠ざかる事を意味します。

「ありがとう、ごめんなさい」

そう言うつばさに、千代さんは意外な答えを返します。

「羽ばたきなさい、つばさ」

ずっと店に縛られて生きて来た千代さんは、自分の娘にも孫にも、同じ生き方を強要しようとして来ました。でも、つばさの成長が、千代さんはじめ、周囲の人々の心にも変化をもたらした模様です。

真瀬も、その一人です。ラジオぽてとに戻ったつばさに、彼は一つのケジメをつけました。つばさへの想いは恋愛感情ではなく「同志愛」だから、これからも仲間としてよろしく、と。

同志、仲間、そして自分を変えること。それが第19週のテーマになってます。

☆帰って来たチクビィー
秀樹と翔太が、いきなり一緒にいるんで驚きました。「あんな所で何をしてた?」って、何処で何をしてたんでしょうか、翔太は? 前週にそんな場面、ありましたっけ?(あったような気がして来ましたw)

「どん底か。俺は案外、嫌いじゃない」

今週の秀樹は、痺れる台詞のオンパレードです。

「俺は絶望した事が無いヤツは、信じない」

「俺はどん底も好きだが、そこから這い上がるヤツの方が、もっと好きだ」

翔太はどん底を味わって、自分を変えたいと願ってます。同じようにどん底から這い上がった経験のある秀樹は、どん底こそが自分を変えるチャンスだって事を知っている。秀樹は、翔太の脱皮に力を貸す事を決めます。

今回、ふと思いました。『つばさ』って、ほとんど全ての登場人物が、それぞれどん底を味わう事で、脱皮する姿を描いてるドラマなんですよね。

で、私はヒプノセラピーを題材にした作品を創った事があるので、少しだけその世界に詳しいのですが、『つばさ』でやってる事って、実はセラピーと同じなんですよね。

セラピーってのは単なる癒しだけじゃなくて、過去を洗いざらい吐き出させ、自分自身の弱さを認めさせた上で、それでも生きて行くなら自分を変えるしか無いって境地にまで追い込んで行くような、ハードな側面もあるんです。

それを悪用したのが、洗脳だったり悪質商法だったりもするんだけど、とにかくそれ位にとことん追い詰められないと、人は自分を変えられない。

私も自分を変えようと努力した時期があったのですが、それは本当に本当にツライ修行みたいなもんで、それ自体が私にとってのどん底でしたね(笑)。

私の場合は他者から「変わらなきゃ駄目だ」と強く言われた事が、自分を変えようとした理由でしたから、結局は変われませんでした。本気で、自分から心底「変わりたい!」って望まない限りは無理なんです。

実際に私は、ヒプノセラピーを受けてみた事がありまして、あれは自分の過去を吐き出しながら大泣きするのが特徴なんですが、『つばさ』を観ながら自分自身と重ねて滝の涙を流す行為も、それとかなり似てるように思えてなりません。

そう言えばセラピーの先生も、映画やドラマを観る行為はヒプノセラピーの「催眠療法」とよく似てるって仰ってました。特に映画館の暗闇の中、大人数がスクリーンに見入ってる状態は一種のトランスで「集団催眠」そのものだ、と。

大丈夫ですか皆さん、引いてませんか?(笑) 私はそういう世界にちょっと触れただけで、どっぷりハマったワケではないけれど、否定するつもりもありません。それで救われる人もいれば、ドラマで癒される人もいる。ただ方法が違うだけだと私は思ってます。

☆千代さんの同志
浪岡正太郎の父・葛城が入院します。どうやら過去の腫瘍が再発した模様です。加乃子は見舞いを促しますが、千代さんは店を優先しないではいられない性分です。

「つばさは充分に強くなった。だから私は、母さんにも生きたいように生きて欲しい」

加乃子は、自分で自分を縛る母にも、羽ばたいて欲しいと願ってるようです。

☆サンバの謎
何かとラジオぽてとを陰で支援してくれる秀樹に礼を言いに来たつばさですが、「勘違いするな。金の為だ」と、相変わらずブラック・ジャックみたいな秀樹w

「俺が愛してやまないのは、カノンとの美しい思い出と、金と、俺自身と、そしてサンバだけだ。サンバは、俺の生きる証だ」

いきなり何を言いだすんだ、このオッチャンは?と思いましたが(笑)、秀樹にとってサンバは、ただの商売でも趣味でもなかった事が、後に明かされます。

さて、そこに秀樹の子分…じゃなくて斎藤興業の社員が3人やって来ます。ん? 3人? 2人だった筈では? そう言えば一人、見慣れない…けど嫌と言うほど見てきたw気がする若者が、口を半開きにして立っているw

そう、翔太は斎藤興業に就職したのでした。モミアゲはこの時の為に伸ばしてたのでしょうか?(笑)

黒づくめのスーツにグラサン姿で、つばさの事を「玉木さんのお嬢さん」と呼び、敬語で話すチクビィー。それがチクビィーなりの、ケジメのつけ方なのです(?)。

そんな翔太の事は玉木家でも話題沸騰、「前々から勝手に突っ走っちゃうとこ、あったよね」って、高校生の知秋にまで言われちゃうチクビィーw

「気持ち悪いっていうか、面倒臭いっていうか…」って、つばさも実に正しい反応(笑)を示し、加乃子を驚かせます。「ほんっとに吹っ切ったのね。私もそろそろ変わらなきゃ」って、またこれ伏線ですか?w

☆ビバマリア
ブラジルからの手紙が届いて、唐突に秀樹が壊れちゃいますw ビバマリアという名のサンバ・ダンサーが亡くなったと知って、常にダンディーな秀樹がバカボンのパパみたいな服(笑。実際は寅さんですね)を着て、放心状態になってしまう異常事態。

それで社員達から呼び出されたつばさは、なぜ自分が呼ばれたのか解らない。「お嬢さんは、ボスの元気の源なんです」と言われても、私だってピンと来ないのですがw、その理由も後にちゃんと明かされます。

ビバマリアとは、かつて加乃子との恋を引き裂かれ「どん底」だった秀樹に、生きる希望を与えたブラジル…出身の浅草wの踊り子です。ビバマリアの踊るサンバには、生きる事への情熱が溢れてた。

「人生は、踊れば悩みなんて吹き飛ばせる」

彼女に救われた秀樹は「川越にも情熱のサンバを」という新たな生き甲斐を見つけ、どん底から這い上がったのです。サンバダンサーの斡旋は商売じゃなくて、実はボランティアだった。

「励ましたい人がいれば、いつでも何処でも」…それが秀樹なりの、ビバマリアへの恩返しだったんです。

そう、単に奇抜な演出だとばかり思ってたサンバ・ダンサー軍団の登場にも、ちゃんとドラマとしての裏設定があったんです! これには意表を突かれ、またもや涙腺決壊ですよw

「ビバマリアは死んだ。今の俺は、天国への階段を踏み外した、罪人だ」

…って、キザ過ぎるだろ、秀樹!w

(つづく)

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