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『ゴリラ/警視庁捜査第8 班』

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石原プロのTV作品DVD化は着々と進んでおり、これまた長らく封印されてた『ゴリラ/警視庁捜査第8班』も販売&レンタルが開始されました。

『西部警察』終了後、3年半の充電を経て、'89年春に鳴り物入りでスタートした刑事アクション大作ですが、これは見事にコケましたよねw

私自身、かなり楽しみにしながらテレビに向かったにも関わらず、最初の5話位で「駄目だこりゃ」とw、視聴をやめちゃった記憶があります。

要するに、面白くなかった。渡哲也、舘ひろし、神田正輝という、当時の石原プロの3トップが初めて揃った番組にも関わらず、ちっともワクワク出来なかったんです。

今回、20数年ぶりに最初の4話を観ましたが、やっぱつまんないですw でも当時と違って、この番組がなぜ面白くないのか?を分析しながら観るという、現在ならではの付加価値があって、退屈はしません。以下、私なりの分析結果を発表したいと思います。

☆時代が変わった

『西部警察』を更にパワーアップしたアクション巨編と銘打ち、初回は台湾とフィリピンで大々的にロケし、戦争映画さながらのドンパチを繰り広げました。

しかし'89年と言えばシュワちゃんの全盛期だし、ハリウッドの刑事物は『リーサル・ウェポン』『ダイ・ハード』と戦争映画ばりのド派手なアクションのつるべ打ちで、いくら石原プロが通常のドラマより1.5倍の予算をかけてると言っても、そりゃもう見劣りも甚だしい。

さらに『西部』の頃には無かったレンタルビデオの普及が追い打ちになって、日本の観客がアクション物に対して、もうすっかり目が肥えちゃった。もはやマシンガン撃とうが車を爆破しようが、誰も喜ばないみたいな空気になってたんじゃないでしょうか。

それと、アクション描写があまりにも大味なんですよね。『西部』の頃は許されても、視聴者の目が肥えてリアルさが求められる時代になると、デタラメさが凄く目立っちゃう。

☆環境の変化

そのアクション場面の撮影も、あの時代は既に規制がかなり厳しくなってて、『西部』の頃みたいに街中で車を引っ繰り返したりドンパチしたりは、容易に出来なくなってた筈です。

だから初回はフィリピンだし、2回目以降もアクションの舞台は山中とか造成地ばっかり。そんな場所でドンパチやられても、ちっともスリルを味わえないどころか、ええ歳したオッサン達が無邪気にサバイバルゲームに興じてる様にしか見えないんですよね。

ハリウッド映画じゃN.YやL.Aなど大都会のど真ん中で銃撃戦やらカーチェイスやら、挙げ句にドッカンドッカン爆破しまくってるワケですから、もうアクションの派手さでは永遠に勝ち目が無い。そういう時代になっちゃったワケです。

☆独立部隊

これは私ならではの感じ方かも知れないですが、警視庁捜査第8班っていうチームが、あまりに自由過ぎるのが面白くない。縛りが無さ過ぎるんです。

一度警察を辞めた人間を寄せ集めて結成された、言わば傭兵部隊なんだけど、なぜか世界中のあらゆる場所で捜査活動が出来て、捜査目的なら強盗などの犯罪行為も黙認され、007ばりに殺しのライセンスまで持っている!

荒唐無稽なのは良いんだけど、何をやっても許される立場になっちゃうと、何のスリルもサスペンスも生まれないですよね? ちっとも格好良くないですよ、それ。

暴走や反則行為が痛快で格好良く見えるのは、縛りがあってこそです。正義や信念の為に、あえてリスクを背負ってタブーを犯す姿にこそ、我々はシビレるワケです。『西部警察』にはまだ、縛りがありましたからね。まぁ、あって無いようなもんでしたけどw

むしろ犯人側の方が、警察に追われる、捕まったら何年も冷や飯を食わされる、ってなリスクを背負って頑張ってるワケです。何をやっても許される刑事集団なんぞ、誰が応援するかい!?ってなもんでしょう。

☆『あぶない刑事』

ハードボイルドでスタートした『大都会』シリーズは面白かったけど、視聴率がイマイチでした。『西部警察』として仕切り直すにあたって石原プロは、亀山ビッチじゃないけど「今度は数字を取りに行くぞ!」と腹をくくり、『大都会』じゃ新聞記者や医者の役だった裕次郎さんを、ついに刑事部屋の長に据えちゃいました。

つまり、プライドを捨てて『太陽にほえろ!』の要素を取り込んだワケです。放映時間帯が早くなった影響もあり、ドラマの内容もより『太陽』に近い健全路線になりました。結果は大成功で、今や『西部』は石原プロの代名詞です。

で、『ゴリラ』には再び舘さんが出るって事で、その直前に大ヒットした『あぶない刑事』の要素を取り入れました。これが非常にマズかったw

やっぱり、一度染み付いたイメージって、簡単には覆りません。『大都会』や『西部』じゃいつも同じ背広着てた(ようなイメージの)渡さんが、アルマーニの三つ揃い? 挿入歌もエンディングもコテコテの演歌だったのが、英詞の打ち込み音楽?

もちろん舘さんも神田さんもオシャレな高級スーツで、常に格好つけながら小粋なジョークを飛ばしてる。オマケに仲村トオルくんが『あぶ刑事』そのまんまのキャラでセミレギュラー出演という節操の無さ。

番組全体が『あぶ刑事』カラーに染められて、渡さんの浮きっぷりと言うか、居心地悪そうな佇まいは痛々しい位です。

これを見てつくづく思い知らされたのは、『あぶ刑事』にとって柴田恭兵の存在が、如何に重要だったかって事です。恭兵さん抜きで『あぶ刑事』をやったら、そりゃスベりますよ。

今回はヒゲ面でワイルドに決めた神田正輝さん。せっかくいい味を出してるのに、『あぶ刑事』もどきの演出をされちゃうと、ポジション的に恭兵さんと比較の対象にならざるを得ません。

この世界観で舘さんの横に立っちゃうと、どうしても違和感がある。なぜなら、神田さんと恭兵さんとは個性が全く違うから。優劣の問題ではなく、これもイメージの定着による先入観です。

そんな先入観を持つ自分が悪いんだけど、それだけ強烈なイメージを築いた番組の真似をするなら、当然そのリスクは覚悟しなくちゃ駄目だと私は思います。

☆若手のイケメン

これも私ならではの感じ方ですが、石原プロの若手イケメン枠って、どうしてこう、代々つまんないんでしょうか? まぁ、若いイケメンはつまんなくて当たり前なんだけどw

特に、申し訳ないけど今回の谷川竜くんは、ルックス以外に取り柄が全く見当たりません。管理官の谷啓さんと紅一点の加納みゆきさんを除けば、現場で活躍する刑事は4人しかいないワケです。石原プロの3トップと肩を並べるには、あまりにもキミは…

☆ドラマ性の欠如

『西部』や『あぶ刑事』にすら辛うじて残ってた人間ドラマの要素が、初期の『ゴリラ』には見事なほど綺麗に排除されてました。

それはそれで有りだと私は思うのですが、大方の視聴者がそれを望んでたかと言えば、そりゃ違うでしょうと言わざるを得ません。

☆路線変更

そんなワケで、他にも原因は色々ありそうですが、『ゴリラ』の視聴率は低空飛行を続け、途中からのテコ入れを余儀なくされる事態になりました。

私は後期の『ゴリラ』はたまにチラッと覗く程度しか観てないのですが、170度ぐらい中身が変わっちゃいましたよね?w

それもその筈、『大都会』の1作目を手掛けた倉本聰さんを、脚本監修に迎えたそうですから! あの、人間ドラマの権化みたいな倉本さんが参加すれば一体どうなるか、あらためて書く必要も無いでしょうw

当時の私はスルーしちゃいましたが、今回のDVD化にあたって、その辺りの稀に見る路線変更の顛末を、レンタルでじっくり確認したいと思ってます。

それで何か面白い発見があれば、またレビューさせて頂きますw

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