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『nude』

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AV女優・みひろの自伝小説を映画化した作品です。もちろんスケベ心も有りですが、それを抜きにしても私は、性を売る職業を選んだ女性達の心情や生い立ちに、なぜか興味を引かれてならないんです。

ゆえに以前レビューした本『名前のない女たち』みたいな、AV女優や風俗嬢のインタビュー集を好んで読んだりします。そりゃあもう、えげつない世界です。

いや、アダルト業界に限らず、元アイドル歌手のインタビュー集とか読むと、まず芸能界自体がえげつない世界である事がよく分かります。普通のアイドル歌手やグラビア・アイドルだって、相当な扱われ方をしてるみたいです。

毎日1〜2時間しか睡眠がとれない過酷な労働条件、そのくせ現金はほとんど事務所が巻き上げる巧みな契約、それが不満で移籍しようものなら、全力でそのタレントを潰しにかかる。

名の売れたアイドルでも、商品価値が下がると無理やり脱がされる。例えばある日、撮影現場に行ってみたら自分の事務所の人間が誰もいない。で、撮影スタッフから「今回は脱ぐ契約になってるから」と初めて聞かされ、自分が脱がなければ撮影が始まらない状態になり、泣く泣く脱いじゃうというパターンが常套手段として使われる、鬼畜な世界なんです。

そんな場合でも、カメラの前では笑顔でポーズをとったり、濡れ場を演じたりして見せる。当然ながら精神バランスを失い、心や体を病んでしまう。

ましてアダルト業界となると完全にヤクザの世界ですから、さんざん利用された挙げ句に使い捨てられ、廃人に追い込まれたり、中には殺されて密かに処分された娘もいたりする(らしい)。本当に恐ろしい世界です。

この映画を観る限りだと、みひろさんは極めて良心的な事務所に恵まれた様で、ちゃんと人間扱いされてます。基本的には女性向けの映画ですから、かなりシュガー・コーティングされてるだろうとは思いますが…

ヌード・グラビアからスタートして、それだけじゃ仕事が少ないからって事でVシネマに出て濡れ場を演じる様になり、それでも中途半端で、名前を売りたいならAVをやるしか無いよと言われ…という、たぶん最もスタンダードな過程を踏んでAV女優になられてます。

原作はどこまで描かれてるのか知らないですが、映画は彼女が悩みに悩んだ末にAVデビューを果たし、その世界で脚光を浴び始めた所で終わってます。

AV女優さんが本当の地獄を味わうのはこれからで、売れてる内はとことんチヤホヤされるんだけど、人気に翳りが見え始めると出演作の内容がみるみるハードになって行き、やがて「肉便所」扱いされる様になり、やはり心と体を壊して引退に追い込まれる。

出演作の内容の変化で自分の商品価値が下がってる事を実感させられるワケで、これほど残酷な仕打ちも無いでしょう。まぁ、そこまで映画で描かれたら、さすがに辛くて観てられないとは思いますが…

そういう現実の厳しさ、本当の恐ろしさが描かれてない事に目を瞑れば、『nude』は真摯に創られた良い作品だと私は思います。

新潟で育ったごく普通の女の子が、漠然と芸能界に憧れて上京し、スカウトされて「メジャーになる為のステップとして」みたいな常套句に騙され、ヌードの仕事を始めちゃう。

注目される事に充実感を覚えながら、心の支えである恋人や親友の理解は得られず、AVデビューした瞬間にそれら大切な人を同時に失っちゃう。その哀しみがよく描かれてて、私はちょっと泣いちゃいましたよ。

ただ、そうまでして彼女はなぜ、注目を浴びたいのか? 何が彼女をそこまで駆り立ててるのか?がよく解らず、共感出来そうで出来なかったです。はっきりした理由なんか無いのが、逆にリアルなのかも知れないですが…

主演の渡辺奈緒子さんは黒木メイサ似の美女ですが、身体を張ってよく演じてられると思います。みひろさんに顔は似てないけど、お乳のサイズは似てましたw

それより、彼女の親友を演じた佐津川愛美さんが良かった! 『ブレスト』で多部ちゃんとも共演してる人です(高校生ブレーンの一人、ブリッ子キャラの役でした)。

地道ながら着実にキャリアを重ねてるみたいで、親友を理解してあげたくても出来ない苦しみ、切なさをしっかり演じた彼女の存在が、この映画を支えてるように私は感じました。

業界内幕物として見れば甘過ぎると私は思いますが、夢と現実の狭間でもがきながら生きる、切ない女の子の物語として見れば、けっこう泣ける映画です。

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