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『つばさ』17 (後)

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☆さよなら、ちくび

「別れてくれ」

はるばる埼玉から訪ねて来たつばさに、理由も告げず、いきなりビーンボールを投げつける、卑怯な翔太、ヘタレ、もみあげ、半開き、乳首、頭皮、レスラー、チャンピオン、怪物、怪獣、乳毛、ち○毛、鼻くそ。

「何があっても、私の気持ちは変わらないから。翔太が好きだから、一番大切な人だから… そばにいて、支えたいの。その為なら、全てを捨ててもいい」

やはりつばさには、一人相撲界のしきたりが理解出来てませんでした。怪獣の為に自分を犠牲にする。怪獣は、それこそが何より怖いんです。

「そういうつばさがプレッシャーなんだ。欝陶しいんだ。別れてくれ。おかんみたいなつばさが、重くなったんだ!」

あの雨の日と同じです。「俺の言った事は忘れてくれ!」の時と。母の言葉、加乃子のお節介、竹雄さんの駄目押し… あの時と、ほとんど同じ流れです。

結局、モミアゲはモミアゲのまま、あれから成長の気配なし… 今回は情状酌量の余地があるとは言え、この男の人生、先行きが心配になっちゃいます。

秀樹の予告どおり、翔太との愛は終わりました。彼の為にと思ってやって来た事が、逆に彼を追い詰めてしまった。つばさは、悩んでる人を放っておけない性格です。私は単純に、あまりに相性の悪い相手とつき合っちゃっただけ、のような気もするのですが(笑)。

でも、たかが失恋とは言え、人の世話を焼く性質を否定されたつばさは、自分のアイデンティティー、生き方そのものを全否定されたも同然なんでしょう。しかも、一番大切に思ってた相手から。

それは、かつて加乃子が味わったどん底と同じかも知れません。加乃子もまた、それまでの生き方を母・千代に全否定された事がきっかけで、家を出たのです。どん底を蹴って、飛び立つ為に…

☆多部未華子の真骨頂
完膚無きまでに打ちのめされて帰って来たつばさですが、こんな時、彼女は決まって空元気を発揮しまくるのでした。

どうすれば、今のつばさの気持ちに寄り添えるのか? 懸命にそれを考え、密かに泣いてくれる家族。私は、つばさが羨ましいです。

ラジオぽてとに於いても、つばさは異様に明るく振る舞います。ラクラクお掃除器具「センジュくん」を背負い(加乃子とのリンク?)、翔太のいなくなった部屋を、唄いながら掃除するつばさ。見るに見かねて、真瀬が言います。

「似合わない事すんなって。泣きたかったら、泣けばいいだろ」

今のつばさに、病気を隠して空元気を見せてた妻・千波の姿がダブったようです。その言葉を聞いた途端、つばさの眼から、みるみる涙が零れ落ちます。

「翔太が一番つらい時に、支えてあげられなかった…」

自分の胸で、翔太を想って泣くつばさに、真瀬の心境や如何に?

…って、なんだかサクサクと書いちゃってますけど、これまでの流れにおける多部ちゃんの芝居はもう、何と表現すれば良いのでしょう?

圧巻と言うには、あまりにさりげない。見事なんて軽いもんでもない。真骨頂ってのも、彼女の場合は全ての演技が真骨頂だし… もう、なんて多部未華子だ!としか言いよう無いですね。

とにかく、しっかり者の「二十歳のおかん」と、実は世間知らずで無垢な「乙女」、この両極端な二つの顔を、交互にではなく同時に表現して全く違和感を感じさせない女優は、多部未華子しかいない。

なぜ彼女が『つばさ』のヒロインに選ばれたのか、その理由を知りたければ、この第17週を観なさいって事ですね。いきなりこの週だけ観たら、翔太はただの精神異常者にしか見えないと思いますが(笑)。

☆本当のどん底
怪獣退治に燃える真瀬が、翔太の巣を急襲し、ベッドに押し倒しますw(すぐに起こしますが)

「あいつにはな、玉木つばさには、俺じゃなくてお前が必要なんだ!」

なんで俺じゃなくて、乳首なんだよ… やっと、ロナウ二郎の気持ちが解った真瀬です。

「今の俺は、足手まといなんです。俺といたら、つばさは俺の弱い部分も、全部引き受けてしまう… 俺の為に、自分のこと諦めて、飛べなくなってしまうつばさを見たくないんです」

そんな事だろうと思ってました。それならそうと本人に言えばいいのに、とも思うけど、だからってつばさが翔太を見捨てるワケが無いし、足手まといになりたくなければ、ああして突き放す以外に方法は無かったんでしょう。

あの親父さえ、今さら現れなければ… 子供の頃からの夢と最愛の恋人を、同時に失っちゃった翔太… やっぱり不憫ですね。ち○毛呼ばわりだけは勘弁してあげますw

さて、その頃、つばさは新スポンサー・城乃内房子様へのインタビュー中継のお仕事、なのですが…

ここ数日、気もそぞろだったつばさは、生中継開始の時間を勘違いしてしまい、なんと房子様が寄付相手達の悪口を言いまくるオフレコ・トークを、町中に生中継しちゃうという、悪夢のような大失態を犯してしまう!

これはもう、神の悪戯と言うか、起こるべくして起こった運命と言うべきか、現場に立ち合う予定だった真瀬が怪獣退治に出向いてしまった事や、他のスタッフ達も何か引っ掛かりながら「ま、いいか」でスルーしちゃった事など、世のトラブルは得てして、こういう些細な不注意やバッド・タイミングが、奇跡的に重なって起こっちゃうんですよね。誰もが身に覚えあり、じゃないですか?

これは本当に、観てるだけで胸が痛くなるような悪夢、でも現実です。もちろん房子様はアルティメット・ハイパー激怒、町内会のラジオぽてとへの出資を全額引き上げるか、さもなくば、つばさをクビにしろと真瀬に迫ります。

出資金を取り上げられたら、ラジオぽてとは倒れます。つばさは、身を引くしか無い。それよりも、自分のミスがどれだけの人数にシャレにならない迷惑を掛けてしまったか。まさに、どん底です。

「人生には、今の自分を脱ぎ捨てる為に、家を出なけりゃいけない時が、あんだよ」

ラジオの男の言葉は、つばさの心の声でもあります。どうやら、飛び立つ時が来たようです。

☆さよなら、おかん
早朝、つばさは大きな鞄を持って、家を出ます。誰にも告げてないのに、居間のお膳には竹雄が置いた甘玉が。店のカウンターには千代が置いたお守りが。そして加乃子が「行ってらっしゃい」と見送ります。

「帰る場所があるから、出て行けるんだよね」

しっかりと頷く加乃子。…ん? 知秋は?

つぱさは翔太を呼び出し、二人の絆を象徴するペンダントを返します。今度こそ、本当のお別れです。翔太は気の毒だと思うけど、つばさの幸せを思えば、怪獣とは付き合わない方がいい。

私としては、ここでサンバダンサー軍団に踊って貰いたい位、めでたい場面なのですがw、最終的にはくっついちゃうんですよね… 乳毛めっ!

☆天使が待っていた
さて、いよいよ、つばさは一人ぼっちです。恋人を失った喪失感と、たぶん家族と長く離れるのも初めてなら、川越から出るのも初めてのようなもの(修学旅行ぐらいはあったでしょうけど)。

淋しさと心細さで、涙が止まらないつばさ。すると、一本道の向こうに人影が… 弟・知秋が、リュックを背負って立ってるではないですか!

「迎えに来たよ!」

いつものように無邪気に笑う知秋は、本当に天使みたいです。つばさの付き添いには、誰よりもつばさを理解してる、この少年。

行かせてあげたいけど、女の子一人じゃあまりに危険って事で、家族が話し合って決めたのでしょう。つばさの荷物を引き受け、何も言わずに先を歩く知秋が、頼もし過ぎますw

このサプライズは、第9週ラストの千波さんに匹敵する感動をもたらしますね。ええ、泣きましたともw

第17週は、つばさ役がなぜ多部ちゃんなのか、と同時に、弟・知秋がなぜ冨浦智嗣くんなのかを、明確に示してくれたエピソードでもありました。素朴さ、明るさ、繊細さ、逞しさ… 彼以外には考えられませんね!

そして、つばさの恋人がなぜ、一人相撲界の重鎮でなければならなかったのか? この旅の終わりに、きっとその答えが見つかるのでしょう。

次週、スニーカー刑事登場!(嬉)

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