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『川の底からこんにちは』

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この映画も、私が「自殺考」で書いた事と被ってる部分があります。あの記事、削除しなけりゃ良かったなぁw

それは「大人になるという事=己を知るって事」っていう部分です。

誰だって若い時には、自分は特別な人間なんだと思いたい。で、本当に特別な人はその才能を開花させて有名人になったりするけど、それはほんのひと握りの人だけの話。だからこそ特別なワケで。

大半の人間は特別じゃない平凡な人生を送るワケですが、そんな自分を受け入れるまでに葛藤が生じるんですね。こんな自分で良いのか、本当はもっと上に行けるんじゃないのか?って。

学生を卒業して社会に出たら、理想の自分と現実の自分とのギャップを嫌でも思い知らされます。その時、現実の自分を受け入れられない人が、自殺に走ったりする。

20代後半の頃の私がそうでした。そして、ほんとに自殺しちゃった同僚のAくんもそうでした。彼は自分が平凡な人間である事が、どうしても許せない様子でした。

そこを乗り越えて、自分が平凡(あるいはそれ以下)である現実を受け入れ、平凡で何が悪い?と開き直る事が出来れば、人は自殺なんて考えなくなるんじゃないでしょうか?

それは諦めだろ?って言われても平気です。諦める事を知らない奴ほど厄介な者はいませんぜ? 「夢を諦めるな!」なんて言えば聞こえは良いけど、そのプレッシャーが自殺者を増やしてるのかも知れないし。

もちろん、何もしない内から諦めるのは論外です。やってみなけりゃ、自分がどの程度の人間か知りようが無いですから。チャレンジと挫折を何度か経る事は必須条件です。

満島ひかりさん扮するヒロインは、自分はしょせん「中の下」だから「しょうがない」って言うのが口癖の、冴えないOLです。彼女はそれで、萎縮しちゃってる。

なんで萎縮しちゃうのか? こんな冴えない自分を、後ろめたく思ってるからだと思います。だから駄目男に振り回され、オバさん達にはイビられ、子供にもナメられちゃう。

前半は、そんな彼女の「どん詰まり」状態が淡々とコミカルに描かれます。正直、観てて愉快なもんじゃありません。かなりイライラさせられます。

でも、恋人(駄目男)に逃げられ、母親に続いて父親も亡くしてしまった時、彼女は開き直るんです。

「中の下で何が悪い? それが自分なんだから、しょうがないよ。しょうがないなら、頑張るしかないじゃん!」

諦めの「しょうがない」が、開き直りの「しょうがない」に変わった時、人は強くなれる。彼女は平凡以下の自分を受け入れ、萎縮する事をやめたんです。

彼女が亡き父から引き継いだ「しじみ」の洗浄工場は、まさに貝のごとく川の底で地道に、踏張って生きてる人達の集まりです。

新社長に就任した彼女が先頭に立って「中の下で何が悪い?」と唄う新社歌の合唱シーンは、覚悟を決めた人間の力強さが溢れる、カタルシス満点の名場面だと思います。

前半のイライラは、この場面で「どん詰まり」から解放され、一発逆転の爽快感を観客に味わわせる、その為の布石だったワケですね。これぞ娯楽映画の王道、アクション映画と同じ手法とも言えます。

どん詰まりから開き直っていく「中の下」の平凡な女を、満島さんは見事に表現されてます。他のキャストは知らない人ばっかで、まさに「中の下」な感じなんだけどw、その中にいても全く違和感が無いのが凄い!

ただし、私がこの映画にハマったかと言えば、かなり微妙なところです。台詞回しがあまりに独特なんで、それを楽しめるか否かで評価が岐れちゃう作品ですね、これは。

今風なのかどうか知らないけど、せわしないリズムの会話や独り言が、私の生理に合いません。笑いのとり方も実に今風のお笑いって感じで、私には馴染みづらいです。時々笑ったけどw

前半で観客に欝憤を溜めさせる為の、計算づくの演出でもあるでしょうが、ちょっと私にはキツかったですね。すごい居心地悪くて、正直二度と観たくないですw

ただし、森田芳光監督のデビュー時なんかも、そんな感覚はありましたから、ハマる人はハマるのかも知れません。実際、いくつも映画賞を獲ってるワケだし、主演女優を嫁にまでしちゃった監督ですからね!

満島ひかりと好きなだけチョメチョメする映画監督… やっぱり、不愉快だなw

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