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『月に囚われた男』

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近未来。月面で独り、資源発掘作業をする男=サム(サム・ロックウェル)。孤独に耐え続けてもうすぐ3年。あと数日で会社との契約期間が終わり、後釜と交代して地球にやっと帰る事が出来る。家では、愛する妻と可愛い娘が待っている。

そんな時、なぜか精神バランスがおかしくなって来たサムは幻覚を見るようになり、それに気を取られて事故を起こしてしまいます。この想定外の事故が、起きてはならない事態を引き起こしちゃう。

昏睡から目覚めたサムは、とんでもない人物と出会ってしまうんですね。それは、本来出会わない筈だった人、決して出会ってはいけなかった人なんです。

そこにいたのは、もう1人の自分。幻覚じゃない、どう見てもサム自身がもう1人、目の前にいる!

『惑星ソラリス』みたいに精神世界を描いた宗教的SFかと思いきや、さにあらず。サムが複数いる事にはすこぶる現実的な理由があり、それによってサムのアイデンティティは根底から崩されちゃう事になります。

以下、ネタをバラしちゃいますと…


もう1人のサムは、お察しの通りクローンです。本来、主人公の契約終了後に作業を引き継ぐ予定だった、後釜のサム。

そうなると気になって来るのが、主人公のサム自身は果たしてオリジナルなのか、あるいはクローンなのか?っていう問題ですね。本人はもちろん自分がオリジナルだと信じてるワケですが……

もう何年も前の映画なんで、さらにネタばらししちゃいますが、主人公のサムもやはり、クローンである事が判明しちゃいます。そして月面基地には、同じサムのクローンが無数に隠されていた!

会社は人件費削減のために、オリジナル・サムのクローン達を3年周期で交代させながら、言わば使い捨てにしてたワケです。

つまり、主人公のサムは契約終了と同時に処分される運命にあった。地球へなんか帰したら、ややこしい事になっちゃいますから…

クローンと言えども人間ですから、普通に感情を持ってます。自分の過酷な運命ばかりか、愛する家族の記憶が実はオリジナルから移植されたもので、現実にはもう妻は死んでる事まで知っちゃうサム。なんとも切ないです。

真相を知ってしまった主人公のサムと、後釜のサムとの間には、同じ境遇を背負った者どうしの奇妙な友情が芽生えていきます。かくして、2人は地球への帰還を目論むのですが…

ハリウッド映画だけど低予算で、キャストは実質サム・ロックウェル1人だけ。3年ですっかりくたびれたサムと、まだ起きたばっかで新鮮なサムとの演じ分けが絶品ですw

あと、主人公の唯一の話し相手となる人工知能の声を、なぜかケビン・スペイシーおじさんが担当してます。まぁ何ともむさ苦しい映画だことw

地味だけど、これはなかなか面白いですよ。『ブレードランナー』や『トータル・リコール』の原作者=フィリップ・K・ディックを彷彿させる世界観ですね。

ちょっと毛色の変わった映画を観たい方にはオススメです。

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