☆『太陽』遺伝子を継ぐもの
いまだに『太陽にほえろ!』の復活を待望するファンもいるみたいだけど、我々が愛した『太陽』はもう、二度と再現する事は出来ないですよ。
相応しい俳優もいない、アクションの撮影も困難、今なら確実にビデオ撮影だし、根本的に時代がもはや違い過ぎます。『太陽』が好きであればあるほど、観れば失望すること必至でしょう。
そんなバカな望みを抱くよりも、新しいドラマに目を向けた方がよっぽど楽しいですよ。そこには確実に『太陽』の遺伝子が宿ってますからね。
思いつくまま書きますから、年代はバラバラだし抜けも多いかと思いますが、詳しい方、コメントでフォローよろしくお願いしますm(_ _)m
『太陽』遺伝子を最もストレートに受け継いでるのは、TVドラマよりCMの世界かも知れません。ゴリさん(竜雷太)と長さん(下川辰平)が出演し、岸谷五朗さんが新人刑事「ブレンディ」を演じた、缶コーヒー「ブレンディ」のCMはシリーズ化されました。
缶コーヒーと言えばおなじみ「BOSS」のCMでも、ゴリさんや殿下(小野寺昭)、テキサス(勝野洋)らが宇宙人トミー・リー・ジョーンズに刑事魂を叩き込みました。
あと、SMAPの草なぎ君がジーパン(松田優作)のコスプレをして「なんじゃこりゃあーっ!?」ってやったのは、腕時計のCMでしたっけ? あれは見事にスベってましたねぇw 下らないからスベるんじゃなくて、大した思い入れも無いクセにウケ狙いでネタにするからスベるんです。
その点、柳沢慎吾さんがやる山さんやジーパンの物真似は、全然似てないかも知れないけどw、過剰なほど『太陽』への愛が伝わって来るから笑えるんです。ゆうたろう氏が演じるボスもしかり。パロディは創り手に元ネタへの愛が無ければ面白くならないですよ。
バラエティー番組でも『太陽』パロディは、挙げればキリが無いほど創られて来ました。いちいち憶えちゃいないんだけどw、とんねるずの貴さんがやってたバミューダ刑事は印象深いです。憲さんが山さん役で、そう言えば確か、本物のトシさん(地井武男)も出ておられました。いやー、懐かしい!
☆さてTVドラマですが、最も大量の『太陽』遺伝子を受け継いだ作品って、実は『踊る大捜査線』ではないかと私は思ってます。
脚本の君塚良一さんは、まず『太陽』の作劇パターンを徹底的に研究し、それを全て禁じ手にする事で斬新さを生み出そうとしたそうです。
例えば「主人公が走らない」「主人公が逮捕しない」「刑事をニックネームで呼ばない」「刑事の私生活は描かない」「刑事が犯人に自己投影しない」「聞き込み捜査シーンに音楽を乗せない」等といった事です。それは裏を返せば、全面的に『太陽』の影響を受けてる作品なワケですよね。
君塚さんがそうして『太陽』を意識しまくってたのは、『太陽』が現在全ての刑事ドラマのスタンダードである事を、よく分かっておられたからです。そして実は君塚さんご自身も、『太陽』でプロデビューされた脚本家のお一人だったりします。
で、そうして表面的には『太陽』の真逆を行きながら、やってる事の根本は新人刑事の成長劇であり、刑事どうしの絆や殉職の危機、所轄署と本庁の確執なんかが描かれてるという、実は他のどんな刑事ドラマよりもストレートに『太陽』を継承してるんですよね。
だからこそ私は最初ハマったし、大衆にも愛される番組になり得たんだと思います。それをアホの亀山がメチャクチャにしちゃったんですけどね。(同カテゴリーの記事『胸踊らない大捜査線』参照)
その『踊る』あたりから、『太陽』を観て育った世代がドラマを提供する立場になって、新作ドラマに『太陽』オマージュを盛り込む事が多くなりました。
☆宮崎あおい、堀北真希といった新人女優を起用してブレイクさせた深夜ドラマ『ケータイ刑事』シリーズは、まさに新人俳優の登竜門と云われた『太陽』を彷彿させます。
実際『太陽』でデビューされた山下真司さんをレギュラーに迎え、役名もそのまま「五代潤」とし、なぜか交番勤務に大降格したw長さんから新しいスニーカーを貰うなど、ファン泣かせな場面も登場しました。
☆『トリック』の堤幸彦監督もどうやら『太陽』フェチで、『ケイゾク』に竜雷太さんを起用して「昔はゴリさんだった」事を小出しに匂わせたり、ヒロイン(中谷美紀)にジーパン刑事と同じ「柴田純」って役名をつけたりしてました。
続編『SPEC』や映画『二十世紀少年』でも竜さんを刑事役で使ってましたから(役名は長さんw)、相当お好きなんだと思いますよ。ちょっと歪んだ愛情ですけどねw
☆他にも『太陽』にオマージュを捧げた作品は、挙げればキリが無いほどあるかと思いますが、中には(草なぎ君のCMじゃないけど)単なるネタとして『太陽』を使ってる、ちっとも愛が感じられない作品もありますね。
天海祐希さんの『BOSS』なんかも、温水洋一さんに「落としの山さん」を名乗らせて、私の神経を逆撫でしてくれました。
それがギャグとして活きてりゃ別に怒ったりしないんだけど、クスリとも笑えなかったですからね。愛もセンスも無い創り手には『太陽』をネタにする事を全面的に禁止します。
☆多部未華子ちゃんの『デカワンコ』は一見、単なるネタとして『太陽』を扱ってるように見えるかも知れません(ボスのブラインド覗きとかねw)。でも、実は根本的な部分で『太陽』スピリットを忠実に受け継いでる番組なんですよね。
例えば、新人刑事(ワンコ)の成長を軸に物語が組まれてること(なかなか成長しないけどw)。毎回コンビを組む先輩刑事が入れ替わり、それぞれのやり方で刑事魂を伝授していく構成は、初期の『太陽』そのまんまです。
そしてニックネーム。鼻が効く+一子という名前=ワンコ、ってなネーミングの方程式は、かなり『太陽』的センスに近いと私は思います。ボス、シゲさん、コマさん、ちゃんこ、デューク、キリ等、他の刑事達も七曲署にいてちっとも不思議じゃないニックネームです。デュークは実際いたしw
さらに、安上がりな屋内推理劇でお茶を濁す刑事ドラマばっか粗製濫造されるこのご時世に、『デカワンコ』はロケを多用し、立ち回りによるアクティブな逮捕劇をきっちり見せてくれました。
何より、新人刑事であるワンコ=多部ちゃんが、ホントによく走ってくれました。チョー鈍足という捻りは加えてあるものの、『太陽にほえろ!』=「走る新人刑事」ですからね!
逆に、大野克夫さんによる『太陽』スコアの中でも代表的な2曲(メインテーマとジーパン刑事のテーマ)を堂々と本編に使用しちゃったのは、オマージュというより一世一代の「ネタ」ですよね。「普通やらねーよ!」っていうw
☆ワンコと並んで濃厚な『太陽』遺伝子を有する作品が、鈴木福くんがボスに扮した『コドモ警察』です。
これ、もし大人の俳優が演じたら、ただの『太陽にほえろ!』ですから!w(もちろん絶妙な捻りは加えられてますが) 演じてるのがコドモだというだけで、あんなに笑える作品になっちゃうってのは、思いつきそうで思いつかない大発明だと思います。
ナベさん、イノさん、スマート、ブル、エナメル、マイコと、ホントにみんな七曲署にいそうな人物ばかりです。コドモだけどw
☆ほか、私が知らなかったり忘れちゃった番組の中にも『太陽』オマージュやパロディを盛り込んだものは沢山あるでしょうし、今後も創られて行く事と思います。
佐々木蔵之介さんの『ハンチョウ』シリーズは、『太陽』でプロデビューされて私もお仕事をご一緒した、大川俊道さんがメインライターを務めておられ、かなり『太陽』テイストの内容なんだとか。
なので『太陽』ファンの先輩さんから視聴を勧められたのですが、顔にいかにも「私は刑事です!」って書いてあるようなガッチガチの芝居をされるキャスト陣に馴染めず、チラッと観ただけで敬遠しちゃいましたm(_ _)m
『相棒』の水谷豊さんにも裕次郎ボスや山さんの面影が見られますが、まぁそこまで言い出すとキリが無いですねw 他にも色々あったと思うんだけど、今思い出せるのはこんなとこです。
私が刑事ドラマの新作を逐一チェックするのって、結局こうして『太陽にほえろ!』の遺伝子を見出す楽しみがあるからなんです。だから『太陽』と全然かけ離れてそうな番組はハナからスルーしてますもんね。
今は『太陽』世代のクリエーター達が映像業界の中核にいますから、遺伝子がいっぱい見出せてホント楽しいです。特に『デカワンコ』や『コドモ警察』みたいに濃厚で、なおかつ独自の面白さを持つ番組と出会えた時の喜びは、もう格別です。
七曲署は今もこうして、いろいろ形を変えながら犯罪と闘い続けてるワケですね。
我が七曲署は、永遠に不滅です!
……終わったあぁぁぁー!!w
さて次回からは、『太陽にほえろ!』全730話を1本1本、詳細にレビューして行きますので、お楽しみに!(うそw)