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七曲署ヒストリーPart.16

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☆1997年『七曲署捜査一係』

『太陽にほえろ!』終了から約10年後、「放送開始25周年記念スペシャル」として、七曲署は復活を遂げました。

番組の生みの親である岡田晋吉さんが、中京テレビの重役に出世しちゃってドラマ制作からしばらく遠ざかっておられたのが、ようやくゆとりが持てる立場になられたんですね。

で、岡田さんは「単発でいいからドラマ創らせて!」って日テレに掛け合って、じゃあ数字が稼げそうな『太陽』の続編ならば、って条件でOKを貰ったんだそうです。

愛があるんだか無いんだかよく分かんない制作動機だけどw、とにかくTVドラマを創る事が好きで好きで仕方がない人なんですよね、岡田さんというお方は。根っからのクリエーターなんです。

ボスの役は「この男以外には考えられなかった」って事で、舘ひろし。いや、七曲署のボスって柄じゃないでしょ舘さんは!って私は思ったけど、じゃあ他に誰がいる?って言われたら、確かにいないんですよね、他には。

そして新人刑事「ダンク」に、文学座から抜擢された浜田学。いまいち華が無くて印象に残らない人だけど、誠実そうな感じには好感が持てました。

ただし「ダンク」っていうネーミングがねぇ… なんか、無難にやっつけた感じがするなぁw いずれにせよ’90年代ともなると、さすがに横文字のあだ名はちょっと痛々しいw

ほか、山さん&長さんポジションに石橋蓮司、紅一点に多岐川裕美、ゴリさんポジションに小西博之、殿下(キャラ的にはドック)ポジションに中村繁之といった布陣。

いちおう長さん(下川辰平)がゲスト出演されたものの、新顔ばかりの一係メンバー達に(建物も変わっちゃったし)すぐ感情移入できる筈もなく、やっぱ『太陽にほえろ!』を観てる気分にはなれなかったですねぇ…

裕次郎ボスは、格好つけてないのに格好良いのが一番の魅力でした。舘さんは「いかに自分を格好良く見せるか」だけで俳優をされてる(ように見えちゃう)方ですから、醸し出す空気感がまるで違うんですよね。

いや、それ以前に時代の空気が違う。大ヒットする番組ってのは特に、時代の空気とマッチしたからこそ広く支持されるワケで、10年20年経って同じ事してもうまく行くワケが無い。

だからこの手の復活ドラマが成功した例って、あんまり聞かないですよね。『Gメン』も『特捜』も『西部』も、復活版はことごとくコケてる筈です。

そんな中で、この『太陽』復活版は20%以上の視聴率を稼ぎましたから、まだ成功したと言える稀有な例かも知れません。さすが『太陽』スタッフですからクォリティーは高いし、ビデオで撮られた他の復活ドラマと違って、ちゃんとフィルム撮りで製作された事も大きいかと思います。

だけど、これが『太陽にほえろ!』である必要が、果たしてあるのか? ドックやブルース、マイコン(笑)達のその後が描かれてこそ、復活する意味があるんじゃないのか? それを言っちゃあお終いなのかも知れないけど…

この復活版で私が気に入ったのは、石橋蓮司さんだけです。過去の『太陽』でさんざん凶悪犯を演じて来られた方ですがw、そんな人が味方についたら心強いですよ。暴力団に乗り込む場面でも、ヤクザ俳優達よりよっぽど強面だしw

他のメンバーも皆さんいい味を出されてましたから、レギュラー化して毎週観ていれば、その内ハマってたかも知れません。特に『太陽』はキャラクター主体のドラマですから、単発じゃキツいものがありますね。

☆1998年『七曲署捜査一係’98』

それはともかく視聴率は良かったので、翌年に第2弾が製作されました。残念な事に石橋蓮司さんはメンバーから抜けちゃいましたが、代わりに吉田栄作さんが新加入(ニックネーム無し)、ゲストに天海祐希さんも登場します。

栄作さんはトラウマを抱えた元SAT隊員の設定で、一匹狼キャラでありつつ同僚を気遣う優しさもある、ジプシー刑事(三田村邦彦)に近い雰囲気で、なかなか魅力的な刑事像を見せてくれました。レギュラーでやってたらファンになったと思います。

天海さんは舘ボスとほのかなロマンスを匂わせる敏腕弁護士の役で、この共演がきっかけで(?)石原プロとの親交が深まって行く事になります。でも『太陽』は石原プロ作品ではありませんw

ちなみに天海さんはお母さんと2人で『太陽』のファンだったそうで、この出演はもちろん、後の連ドラ『BOSS』で女裕次郎を演じた際には、きっと母娘で大喜びされた事でしょう。

☆1999年『七曲署捜査一係’99』

さて! 『太陽』に黒歴史なるものがあるとすれば、これぞまさに汚点と言わざるを得ない「やっちゃった」作品なんじゃないでしょうか?

この回は新人刑事役になんと、あの押尾学をキャスティングしちゃったのでした。やっちゃいましたねぇ、ホントに。汚点としか言いよう無いです。

恐らくマカロニ刑事(萩原健一)的な反体制スピリットを持った、やんちゃなキャラクターをイメージしたんだろうと思いますが、ショーケンさんの不良性と押尾の不良性とでは、質がまるで違いますよね?

実は私、この回に限って見逃してるんです。ビデオデッキの不調で予約録画が出来なくて、帰宅したらもう番組の中盤でした。

で、途中からでも観ようかなと思いテレビをつけたら、なんかチャラチャラしたアロハみたいな柄シャツを着て、耳にピアスをした押尾がいきなり映し出されたんですね。

「こりゃ終わってるわ」って思った私は、すぐにテレビを消しちゃいました。いくら何でも、あれは『太陽』のキャラじゃない。マカロニの長髪と押尾のピアスとでは、やっぱ質が全然違いますよ。

そしたら数年後、あの事件ですからね。私は、神様に感謝しましたよマジで。あの回を観ないで済ませて頂いて、ホントにありがとうございます!って。

もはや復活版は別物と割り切ってはいたけど、それでも『太陽』に参加した俳優さんには無条件に親しみを感じちゃう私ですから、もし押尾の演じる新人刑事にも親しみを覚えてたら、あの事件で私は相当なショックを受けたかも知れません。

観なくて良かった。本当に良かった。この回、まるで押尾学の未来を暗示するかのように、視聴率はガタッと落ちてしまいました。

☆2001年『太陽にほえろ!2001』

視聴率で失敗した『太陽』チームは、舘ひろし主演による新しい単発ドラマ『刑事』を送り出すもまたもや失敗(私はこれも観てません)。

いよいよ崖っぷちに追い詰められ、岡田さんはそれまであえて避けて来た『太陽にほえろ!』というタイトルを、いよいよ番組名に冠して起死回生を図られたのでした。

新人刑事に金子賢というキャスティングは悪くないと思ったものの、ジーパン刑事(松田優作)に憧れて刑事になったという設定には、さすがに失笑せざるを得ませんでした。

視聴者にとっては確かにジーパンはカリスマ的存在だけど、ドラマ世界の中じゃ無名の(しかも30年前の)一警察官に過ぎなかった人なのに、それを崇めて部屋にポスターまで貼ってる(しかも銃を構えたジーパンの写真。誰が撮ってん?w)って、まるで変質者じゃないスか!

ファンサービスしてくれるなら、そんな強引極まる設定よりも、ドックやブルース、マイコン(笑)の現在を見せてくれた方がよっぽどファンは嬉しいですよホントに。

まぁジーパン絡みの設定は、ゲストにシンコ=高橋惠子さんを迎える事から後付けされたのかも知れません。だけど、ジーパン殉職を機に刑事を辞めたシンコが、なぜか七曲署に鑑識課員として勤めてる(しかも舘ボスに惚れてる!)って設定もまた、かえってオールドファンの神経を逆撫でしちゃったんじゃないでしょうか。

創り手に『太陽』への愛が無いワケじゃないとは思います。けど、こんな無理矢理な形で過去のキャラクターが引っ張り出される事を、ファンは誰も望んでない筈です。まして新しいファンはジーパンにもシンコにも思い入れは無いでしょうし…

せっかく馴染んで来た新一係メンバー達も、舘ボスを除いてなぜか総入れ替えされちゃいました。新キャストは大路恵美、宮下裕治、浪花勇二、工藤俊作、黒鉄ヒロシという面々。知名度が一番高いのが漫画家の黒鉄さんというw、何なんスか、この地味にも程がある人選は!

内容そのものはやっぱ『太陽』スタッフだけあって、ある程度のクォリティーを保ってるんだけど、こんな(言っちゃ悪いですが)寄せ集めみたいな面子の七曲署なんか見たくなーいっ!!(乳首)

岡田さんとしては起死回生で、数字が良ければレギュラー化も考えておられたという『2001』ですが、残念ながら…いや、当然と言うべきでしょう、視聴率は11%という、昔の『太陽』なら絶対に有り得ない大惨敗を喫し、七曲署の歴史はほろ苦い結末を迎える羽目になっちゃいました。

まぁ視聴率はどうでもいいとしても、やっぱ復活版なんか、最初からやるべきじゃなかったですね。オールドファンは「こんなの『太陽にほえろ!』じゃない!」って思うだけだし、新しい視聴者は「なんじゃ、この古臭い作劇は」って失笑するだけで、誰も喜ばないですよ。

唯一嬉しかったのは、大野克夫さんによる新しい『太陽にほえろ!』のスコアがたくさん聴けた事だけです。それとて昔の楽曲の方が遥かに良いんですけどね。

いやぁホント、返す返すもこれが七曲署の終着駅だなんて、私としては残念で仕方ありません。せっかく裕次郎ボスの復帰をもって飾った有終の美が、台無しになりかねませんよ。

だけど所詮、復活版なんて一過性のイベント、余興に過ぎないんですよね。誰も憶えちゃいないでしょうし、これが『太陽』の歴史に泥を塗ったワケでもない。だから腹も立ちません。

しかしこれでヒストリーを締めくくるのもあんまりなんで、最後に良い話を書きますと、シンコ=高橋惠子さんが一係室に入って「ボス」って台詞を言う場面の撮影で、高橋さんは涙が止まらなくなってしばらく芝居が出来なくなっちゃったそうです。

それで1時間近く待たされた舘さんは、高橋さんを責めるどころか「そこまで気持ちが入ってるのは素晴らしいし、(『太陽にほえろ!』が)そんな番組だった事が羨ましい。OKベイビー」とか言って、すっかり高橋さんのファンになられたんだとか。

出演期間が長かったせいもあるでしょうけど、役者さんがそんなにまで出演作に対して愛着が持てるのって、現在じゃなかなか有り得ないでしょうね。

『太陽にほえろ!』って、そういう番組だったんです。だからこそ、我々ファンの心にも深く、深〜く刻まれて、消える事が無いんですよね。

……そんなワケで、七曲署の長〜い歴史も、これにて終了です。当然ながらこの連載も、ようやく終了……と見せかけてw、もう1回だけ書かせて頂きますm(_ _)m

(残念ながらw、まだ続く)

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