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七曲署ヒストリーPart.14

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#700 ベイビー・ブルース

第600話に続いて、700回目もブルースがメインの話になりました。チームプレーが描かれるイベント的な話を見送ったのは、ボスが欠場中っていう事情からでしょうけど、当時の『太陽にほえろ!』をいかにブルースが支えてたかを物語ってるようにも思います。『太陽』がデビュー作となる新人俳優として、又野誠治さんは最後の人でしたからね。

この回で奥さん(渡瀬ゆき)が出産、晴れてブルースは父親となりました。ゲストは横山やっさんの息子・木村一八。なかなかのイケメンでしたよね? もしかすると新人刑事候補の1人だったのかも知れませんが、今はどうしておられるんでしょうか…

ボスも山さんもいないこの時期、新聞のテレビ欄を見ると『太陽』のキャスト筆頭が神田正輝さんになってる非常事態。

その穴を埋めるべく(ギャラ予算も浮いた事だし?)この期間はゲスト俳優がやたら豪華でした。例えば元ピンクレディーのMIEさんや萬田久子さん、美保純さん、戸川純さん、香坂みゆきさん、武田久美子さん、室田日出男さんetc…

『太陽』はレギュラーキャスト全員がそれぞれ主役として成立する番組ですから、ボスがいなくても何とかなっちゃうんですよね。だけど、いつまでもこの状態だとさすがに苦しい。

いよいよ15年目を迎える七曲署に訪れた、未曾有の危機を救うべく、西部方面から強力な助っ人がやって来ます。

#706 ボス! 任せてください

裕次郎ボスの代役が務まるのは、名実共にこの人しかいないでしょう。大門団長改め、橘警部こと渡哲也さんです。

『西部警察』シリーズ終了から2年経って、少し髪も伸びてマイルドに変化しつつも、前触れなく登場していきなりボスの椅子に座って、全く違和感を感じさせないのが凄い!w

裕次郎さんと渡さんの関係を視聴者みんなが分かってるせいもあるけど、この時あらためて渡哲也という存在の凄さを思い知りました。山さん同様、いわゆる1つの渡哲也ですよ。

しかし、こうなると世間が『太陽』=石原プロ作品って思い込むのも、まぁ当たり前ですよねw だいたい、プロであるマスコミがそう思い込んで記事を書いてたりしますからね。

さらにこの回、『太陽』最後の新人刑事=D.J.(西山浩司)も同時加入します。ボスがいてもいなくても、この時期に登場する事は前から決まってたみたいですね。

DJは画期的な新人刑事でした。まず、背がとても小さい!w 優作さん以降、『太陽』の新人刑事は身長180センチ以上が暗黙のルールになってましたから。おそらく160センチも無いであろう西山さんは、他の刑事達と並ぶとホント子供に見えちゃいます。

それと、お笑い畑からの抜擢も『太陽』では初めての事でした。西山さんは欽ちゃんファミリー、イモ欽トリオのワルオでしたからw

このキャスティングは、’80年代のお笑いブームに沿って、TVドラマの内容もどんどん明るく軽いものになりつつある、時代の流れを受けたものと思われます。同時期に『あぶない刑事』もスタートしてますからね。

つまり『太陽にほえろ!』はこれからも柔軟に変化しつつ、まだまだ続いて行く予定だったワケです。実際、DJ刑事はそれまでの『太陽』には無かった新風を巻き起こしてくれました。

生意気な態度や人なつっこさはマカロニやラガーを彷彿させつつ、超すばしっこいアクロバティックな立ち回りは、14年間『太陽』が保ってきたリアリティを根底から破壊しかねないw、コントすれすれのアクションでした。

いつも新しい刺激を求めてた私にとって、そんなDJ刑事の登場は嬉しい出来事でした。新しい刺激と言えば、この回からオープニング曲もオール打ち込みによる「太陽にほえろ!メインテーマ’86」に変更されました。イントロを聴いても『太陽』のテーマだとは誰も気づかない位、大胆にアレンジされた曲です。

DJの登場もテーマ曲の変更も、保守的なファンには不評だったみたいだけど、私は逆にワクワクしたものです。これで「日没が近づいてる」なんて予感も吹っ飛びましたからね。

#713 エスパー少女・愛

だけど、本作が『太陽』最後の2時間スペシャルとなりました。実力派のアイドル女優として注目されてた工藤夕貴さんをゲストに、初めて超常現象ネタを扱った意欲作です。

とは言え、そこは『太陽』らしく荒唐無稽なSFもどきに陥る事なく、ささやかな超能力が、思春期の女子にありがちな不安定さのメタファーとして描かれてるんですよね。あくまで人間ドラマであり、青春ドラマなんです。

#715 山さんからの伝言

死んだ山さんがかつて担当した事件に残されてた謎が、スコッチ路線から山さん路線にシフトする兆候が見られてたデューク刑事によって解決されます。

ところが本件を最後に、デュークは海外研修に旅立っちゃう。最終回まで残り3話だと言うのに!w クール系の刑事は任期が短い伝統があるとは言え、なんとも中途半端なタイミングの降板でした。契約上の事情でもあったんでしょうか?

#718 そして又、ボスと共に (終)

体調に回復の見込みが無いって事で、石原裕次郎さんがついに『太陽にほえろ!』降板を発表しちゃいました。日テレとしては新しいボスを迎えて番組を継続する意向で、加山雄三さん等が候補に挙がってたほか、15周年にはなんとアフリカ・ロケまで予定されてたんだとか。

だけど、石原プロ側が番組の終了を強く要望したんだそうです。私は、それで正解だったと思ってます。加山雄三さんも悪くはないけど、やっぱ石原裕次郎の存在が無くなっちゃうと『太陽にほえろ!』は完全にカラーが変わっちゃう。

たとえ時々欠場する事があったにせよ、裕次郎ボスのオーラがいつも七曲署には存在してましたからね。だから渡哲也さんの代理ボスには違和感が無かった。渡さんの背中に裕次郎さんの魂が感じられますから。

かくして1986年11月14日(私の誕生日イブですw)、『太陽にほえろ!』は最終回を迎える事になりました。ブルースが、かつてやむなく射殺した凶悪犯の兄(遠藤憲一)に撃たれ、瀕死の重傷を負ったまま監禁されてしまいます。

もうこれ以上、部下を死なせたくない! その想いを胸に、ボスが帰って来ます。犯人の妹を自ら取り調べたボスは監禁場所を聞き出し、橘警部らがブルースを救出。すんでのところで仲間を失わずに済んだ捜査一係メンバー達は、再びボスの指揮の下、一丸となって捜査に向かうのでした。

新人刑事があわや命を落とさんという危機を、ボス達が必死に救出する話は『太陽』じゃ定番とも言えるもので、私としては「14年以上続いた番組の最終回にしては淡白やなぁ」ってのが正直な感想でした。

ところが面白い事に、つい最近、何かの雑誌で「心に残る最終回ベスト10」みたいなアンケートを実施したところ、なんと第1位にこの『太陽』最終回が選ばれたんだそうです。これまで放映されて来た(近作だと『家政婦のミタ』等も含む)全ての連続ドラマの中で1位ですよ?

それは恐らく、この最終回が結果的に裕次郎さんの遺作になっちゃった事実が、大きく影響してるものと思われます。裕次郎さんはこの翌年に亡くなられたんですよね。

それだけじゃなくて、ボスが犯人の妹を説得する十数分の場面が、全て裕次郎さんのアドリブだった、という裏話が色んなメディアで紹介された影響もあったのでしょう。

ボスの芝居がアドリブである事は、私も当時放映を観ててすぐに判りました。その場面だけはボス=藤堂俊介から離れて、ほとんど素の石原裕次郎になっちゃってましたからね。相手役の女優さんがまた、異常に緊張されてるのが伝わって来たしw

で、その時に裕次郎さんが実感をこめて語った内容が、命の尊さ、生きるという事の素晴らしさだったりするもんだから、今じゃ「裕次郎さんの遺言」みたいに解釈されてるワケです。

でも、裕次郎さんはただ『太陽にほえろ!』がずっと描いて来たテーマを最終回で総括されただけ… もっと言えば、ブルースの命を何としても救いたい!っていう、その場面におけるボスの心情を、普通に演技として表現されたに過ぎないのかも知れません。

それが翌年の死をきっかけに伝説化され、アンケートで1位になるほど世間に浸透しちゃうワケですから、やっぱり超大物、スーパースターたる所以ですよね。至急、国民栄誉賞を検討すべきですw

『太陽にほえろ!』の終焉は、裕次郎さんの病状悪化というアクシデントにより急きょ決まった為、現場は色々と大変だった事と思います。

気の毒なのは、颯爽と登場して僅か1クールで番組が終わっちゃった、DJ刑事=西山浩司さんですよね。スニーカーの山下真司さんが最も不遇な新人刑事って、前に書きましたけど、DJは不遇というより不運でした。

ただ、西山さんはこの後も『太陽にほえろ!PART2』『ジャングル』『NEWジャングル』と、4作品をまたいで刑事を演じる唯一の俳優になりますから、かえって美味しかったと言えるかも?

で、私自身はどんな心境で『太陽』の終焉を迎えたかと言えば、意外と冷静だったような気がします。

以前「1986年」ってタイトルの記事(日記カテゴリー)に書いたように、私が本格的に映画作りを始め、私なりの『太陽にほえろ!』と言える刑事物に取り組んでる最中の出来事でしたから、ちょうど『太陽』依存から抜け出して自立しようとしてた時期なんですよね。

だから『太陽』が終わって落ち込むという事も無かったし、むしろ自分が大人に脱皮する絶好の機会かも?って、私にしては珍しくw、前向きに捉えてました。

まぁ『PART2』や『ジャングル』にも『太陽』イズムは受け継がれて行きましたから、完全に終わったワケでもないんです。

そんなワケで、この連載もまだ終わりませんw もう少しお付き合い下さいませm(_ _)m

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