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『宇宙人ポール』

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ホントにたまたまなんですけど、実にタイムリーな内容の映画を(レンタルですが)観ました。前からグッドな評判は聞いててDISCASの予約リストに入れてたのですが、先に観たい作品が色々あって後回しになってました。日本公開はちょうど1年位前だったかと思います。

イギリスの田舎町からアメリカのコミックコンペ(マニアの祭典)に参加しにやって来た、素朴なSFオタクのオッサン2人がw、エリア51から逃げ出した宇宙人のポールと出逢い、故郷の星へと帰る手助けをする内に、人種を越えた友情を育むコメディです。

何がタイムリーかと言えば、SF愛と映画愛、そしてお察しの通り、マニア愛に溢れた作品なんですよね。SFコメディの金字塔『ギャラクシー・クエスト』や、日本映画だと『キサラギ』の系譜に入る作品かと思います。

SF小説のネタは全然詳しくない私にはチンプンカンプンなんだけど、映画に関しては『E.T.』や『未知との遭遇』『スター・ウォーズ』『エイリアン』『メン・イン・ブラック』等、誰もがよく知ってる作品がネタになってますので、マニアでなくとも楽しめます。

しかも単なるパロディに止まらず、オリジナルと全く同じ構図やカット割りで、いわゆる「完コピ」されてる場面が随所に出て来て、その徹底ぶりに感動しながら、あまりの凝りようにまた笑っちゃうw

それがまた、決してストーリーの流れを止めないのがミソなんですよね。全ての場面にちゃんと意味があり、一本のドラマとしてスムーズに流れて行きますから、元ネタを知らなくても全然大丈夫なように出来てます。

そして傑作なのが、宇宙人ポールのキャラクターです。映画で描かれる宇宙人と言えば、昔は普通に地球の言語を喋ったりしてたのが、どんどんリアル志向になって言葉は喋らなくなり、無感情だったり無表情だったり、地球人とは生活習慣もまるで違うっていうのがいつしか常識になりました。ところがポールのキャラ設定は、それをもう一回ひっくり返してるんですよね。

例えばポールは英語がペラペラどころか、アメリカのスラング連発の下品さで、感情も表情も豊かだし、スナック菓子みたいなジャンクフードが大好物で、コーヒーも酒も飲むわ、おまけにヘビースモーカーで大麻まで持ち歩いてるw 上半身は裸だけどちゃんとズボン穿いてるしw

なんでそんな設定になったのかと言えば、たぶんポールはイギリス人から見たアメリカ人のイメージを凝縮したキャラクターなんだろうと思います。異邦人のオッサン2人から見れば、ポールは二重の意味で「エイリアン」なんですよね。もしこれが日本でリメイクされたら、ポールは間違いなくコテコテの大阪人みたいに描かれる事でしょうw

そして、ポールがそんなコテコテのヤンキーになっちゃったのにも理由があって、60年前にUFOのトラブルで不時着した彼は、ずっとエリア51でアメリカ人の軍人や研究者達と交流し、スピルバーグ監督に宇宙人映画のアイデアを提供したりwしながら過ごして来たもんだから、すっかり染まっちゃったワケです。

イギリス人オタクから見た宇宙人を通して、我々はアメリカ文化を知るというw、ややこしい構図で自由の国=アメリカを描いた映画なんですね。実際、引っ込み思案なオッサン2人と、途中から道連れになる厳格なカトリック信徒のヒロインが、ポールのお陰で良くも悪くも解き放たれて行く成長ドラマにもなってます。

もちろんMIBとか色んな追っ手から逃れるサスペンスにもなっており、意外な展開もあって最後まで全く退屈させません。笑って笑って、ホロッと泣かされる上質のエンターテインメント、これはオススメです。

オススメついでに、前述の『ギャラクシー・クエスト』も未見の方には今一度、猛烈にプッシュさせて頂きます。

往年の人気TVシリーズ『ギャラクシー・クエスト』(架空の番組)にはいまだに熱狂的なファンがいて、今や輝きを失った出演スター達も年1回のファンイベントでは超人気者。これは明らかに初代『スター・トレック』の事ですねw

で、そんな冴えない落ち目スター達がファンイベントの当日、UFOに拉致されて宇宙戦争に巻き込まれちゃう。てっきりイベントのサプライズ演出と思って苦笑いしてたら、本当に本物の宇宙戦争だった!

実は番組の再放送を傍受したエイリアン達が、彼らを本物の宇宙戦艦クルーだと思い込んで、助けを求めて来たワケです。もちろんそんなもんに命を懸ける義理も無ければ勇気も無い。だけどエイリアン達の善良さにほだされ…

輝きを失ったスター達が、かつて番組の撮影で身につけた宇宙戦争のスキルを活かしw、番組ファンのオタク青年達の協力も得て、邪悪な敵エイリアンの軍団に立ち向かい、過去の絵空事がいつしか真実になって行く。

こうした「なりすまし物」の話は、設定や展開の強引さにシラケる事がままあるんだけど、これは根本が荒唐無稽なSF活劇ですから、かえって気になりませんw マニアの存在を内心バカにしてた主人公たちが、戦いを通して彼らと熱い絆を育んでいくドラマも微笑ましくて、泣けます。

あと、『宇宙人ポール』と『ギャラクシー・クエスト』には共通のキャストが1人いまして、それはSF映画の歴史を語る上でとても重要なポジションにいるハリウッド女優さんだったりします。特に『ポール』の方じゃ出オチみたいなゲスト出演で、大女優なのにシャレが解ってる素敵な人です。

マニアへの風当たりは日本よりアメリカの方がキツそうなイメージがあるんだけど、こういうチャーミングなマニア映画も少なくないんですよね。日本じゃ『キサラギ』位しか思い浮かびません。

かなり前に『七人のおたく』なんて映画もあったし、『阪急電車』でもオタクどうしの可愛い恋が描かれたりしてたけど、オタクをヘンに美化したような作品に対しては、かえって拒否反応を示すのがオタクですからねw

その点、アメリカ映画はオタクの駄目さ加減をちゃんと描きながらも、実にチャーミングなんですよね。それはオタクをよく理解してるからと言うより、創り手自身がオタクだからかも知れませんw スピルバーグ監督を筆頭に、オタク上がりの大監督が多いですからね。

日本にもそういう土壌があれば、私の人生も変わってたかも?w いつまで経っても体育会系の古い体質から脱皮できない日本映画界では、かようにチャーミングなマニア映画はなかなか生まれないでしょうね。

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