Quantcast
Channel: blog@なんて世の中だ!
Viewing all articles
Browse latest Browse all 518

スコッチ刑事登場!

$
0
0
CSのファミリー劇場chで毎週土曜の夜10時から、『太陽にほえろ!HDリマスター版』が2話ずつ放映されてます。で、今週12月1日放映分からいよいよ、沖雅也ふんするスコッチ刑事が登場します。

刑事ドラマは嫌いじゃないけど、『太陽にほえろ!』のマンネリ感やアットホームな雰囲気、体育会系のノリ、青春ドラマ的な演出が苦手で敬遠しちゃうと仰る方に、是非ともこの、’76年秋から半年間放映された「スコッチ刑事編」を、とりあえず最初の2話だけでも一度観て頂きたくて、この記事を書く事にしました。

私だって『太陽』をマンネリに感じたり、青春ドラマ的要素をクサイと思ったり、七曲署の鉄壁なチームワークが綺麗事に見えたりは、当然するんです。だけど、ファンはそれもこれも全部ひっくるめて愛してますから、欠点だとは思わないんですね。

ところがスコッチ刑事ってのは、そんな『太陽』イズムを全面否定すべく登場したキャラクターなんです。情に流されない、チームの輪に入らない、あの裕次郎ボスの命令さえ無視する全く異色の存在だから、マンネリを完全に打破してくれます。

スコッチ以降、『太陽』のみならず他の刑事ドラマ群も、こぞってスコッチ的な「一匹狼キャラ」を投入するようになりますが、やっぱり元祖は超えられないもので、スコッチほどインパクトのある存在はいなかったですね。

’76年当時の『太陽』は、まさに絶頂期でした。視聴率は常時30%を超え、スコッチ登場の前週に放映されたテキサス刑事(勝野洋)殉職編に至っては、なんと42%を記録。手がつけられない「お化け番組」状態でした。

ところが、番組の生みの親である岡田晋吉プロデューサーは、視聴者がマンネリ感を抱いてる事を敏感に察し、鉄壁のチームワークを掻き乱すような「異物」を投入しようと考えた。絶頂期だからこそ出来た冒険かも知れません。

そこで沖雅也という俳優に白羽の矢を立てたセンスがまた素晴らしい! 沖さんの演じるスコッチ刑事は、徹底して非情、徹底して気障、徹底してナイーブ、徹底して一匹狼と、何もかもが中途半端じゃなかった。

そこまでやっても漫画チックにならず、地に足のついた人間味をしっかり表現出来たのは、沖さんが俳優として卓越した表現力を持ってたのと、沖さん自身にスコッチ的な陰影を感じさせる何かがあったから…だろうと思います。

実際、あまりに強烈過ぎて、当時まだ小学生だった私やクラスメート達は、スコッチを毛嫌いしてましたからねw 彼がああいうキャラになったのは過去のトラウマに原因があり、人一倍優しい性格だからこそ鎧を身にまとうようになったワケだけど、小学生のガキンチョにはまだ理解出来ませんからね。

そんな視聴者を決定的に敵に回しちゃったのが、今週放映される『スコッチ刑事登場!』中盤の、七曲署屋上のシーンです。あまりに非情で身勝手なスコッチの行動を見かねた熱血漢・ゴリさん(竜雷太)が、七曲署はチームワークが信条である事と、相手が凶悪犯であろうが人命を何より尊重する事、つまり『太陽にほえろ!』の基本精神を彼に説こうとするのですが…

スコッチは事もあろうに、殉職したばかりのテキサス刑事を批判し始めちゃう。テキサスは、10人近くの敵と銃撃戦の末に被弾して死んじゃったのですが、敵は一人も死んでない。つまり犯人を全員殺さずに逮捕しようとしたワケですが、スコッチは「その甘さこそが命取り」だと主張し、「無用のヒューマニズム」だと切り捨てる。

「テキサス刑事を殺したのは他でもない、あんた達ですよ」

まさに全面否定w でも正論かも知れなくて、とっても痛いところを突かれたゴリさんは、このあとスコッチをフルボッコにしますw

そう、スコッチという異物が入った事で、七曲署メンバーの各キャラクターも浮き彫りにされて行くのが、今観るとすごく面白い。ゴリさんはまさにミスター『太陽にほえろ!』で、番組の基本理念がそのままキャラクター化したような人ですから、それを全面否定するスコッチとは真っ向から対立します。

ボス(石原裕次郎)はまぁ完璧な人格のオーナーですからw、割と超然としてるんだけど、人情派の長さん(下川辰平)はまるで宇宙人を見るかのようなリアクションだし、あの冷静沈着な山さん(露口茂)でさえ「困ったもんだな」と苦笑いw、距離を置いて静観してたりする。

面白いのは若手のボン(宮内淳)で、一番素直にスコッチを受け入れるのも彼なら、何度も期待を裏切られていちいち怒るのも彼。人なつっこい性格で、とにかく真っ直ぐ相手にぶつかるから、後にスコッチが初めて心を開くきっかけを作るのも、このボンだったりします。

そして一番被害を被るのが、今週放映の2話目『殿下とスコッチ』でコンビを組まされる、殿下(小野寺昭)なんですね。七曲署でも一番の優男で生真面目な性格ゆえ、スコッチとは水と油…と思いきや、実は一番スコッチに似てるのも彼かも知れないという意外な展開。

それはつまり、スコッチを非情たらしめた過去のトラウマさえ無かったら、彼は殿下みたいな刑事になってたかも知れないっていう暗示なんですよね。逆に、一歩間違えたら殿下もスコッチみたいになっちゃう可能性がある。

今週放映されるこの2本『スコッチ刑事登場!』と『殿下とスコッチ』は、本当に面白いし良く出来たエピソードだと思います。だから、とりあえず今週だけでも、騙されたと思って『太陽にほえろ!』を皆さんに観て頂きたい!

この2本を観てもピンと来なければ、それは本当に好みに合わないって事でしょうから、これ以上オススメは致しません。でも、もし「こりゃオモロい」と感じられたなら、スコッチが転勤という形で去って行くまでの2クール分を、今後も引き続き観て頂ければ嬉しいです。

『太陽』の長い歴史の中でも、心に深い傷を負って人間味を失った一人の男が、温かい仲間達と出会い、絆を育む事で立ち直って行く様を描いた「スコッチ刑事編」は、最も完成度の高い半年間だったと私は思ってます。沖さんが最初から半年だけの出演と決まってたからこそ出来た作劇ですね。

ストーリーのみならず、今は亡き沖雅也の類い希なる存在感と、美しい佇まい、超シャープな身のこなしは必見です。当時まだ20代半ばだったとは信じられないですよホントに。

ちなみにスコッチ刑事は、転勤してから3年後、裏番組『金八先生』の大ヒットにより存亡の危機に瀕した七曲署を救う為、よりホットな刑事となってカムバックします。最初の半年でトラウマを克服したワケですから、キャラがちょっと変わってるのは理に適ってます。

が、私はやっぱり初期スコッチの徹底したクールさとハードさを支持したいですね。ガキンチョの頃は否定しましたけどw、今観るとカッコイイし、哀しくてとても魅力的です。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 518

Trending Articles