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『源氏物語- 千年の謎- 』

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やっぱり、長く伝えられる物語っていうのは、普遍的なテーマを扱ってるものなんだなぁってのが、私の率直な感想です。

ラストシーンで物語中に現れた作者・紫式部(中谷美紀)が、自分が創り上げた主人公・光源氏(生田とかいう人)に向かって、

「全ての者が惹かれずにはいられない魅力に恵まれた、その幸せの分だけ、あなたには苦難が降り掛かるのですよ」

…みたいな台詞を言いましたけど、まぁそのまんまの事を私も感じながら観てましたw

モテる男は本当に、実にけしからん(怒)。いつの世も、モテる奴はモテるし、モテない奴はモテない。そりゃもう笑えるぐらいハッキリ区切られてる(哀)。少年マンガみたいにオタク少年が何人もの美少女にモテモテなんて、あるかいなそんなもん(嘲)。

でも、モテればモテたなりの苦労が必ず生じて来る。そりゃもう、モテなければ全然味わわなくて済む苦労です。いやぁー僕ちゃん、モテなくて本っ当に良かったぴょーんだ!

そんな当たり前の事を描いてる物語なんだなぁって、なにも作者さんにそこまでハッキリ解説して頂かなくてもw、その辺りは充分に伝わって来ました。

ただし、その根本的な部分で、この映画は失敗してるんじゃないか?って、私は思いました。

光源氏が、誰もが一目見ただけで虜にされちゃうような、そんな魅力的な男には、どうしても見えないんですよね。

まず、生田とかいう人のルックスですよ。そんな眼を見張るほど美しくもなければ、ウットリするほどセクスィーでもない。普通にそのへんにいるイケメンにしか、私には見えないんですよねぇ…

女性から見たらまた違うのかなぁ? でも男の眼から見たって、かつてのジュリーとかジョニー・デップの色気は何となく解りますよ?

それに加えて、光源氏の人物像です。ただ惚れっぽいだけのスケコマシで、複数の美女の間を優柔不断に行ったり来たりしてるだけ。

『サイコ』の主人公と同じで、極端なマザコン感情を自分でコントロール出来ない、精神病患者ですよね、あれって。

でも、それは別にいいんです。実質の主人公は式部ちゃんですから、光くんに感情移入する必要は無い。問題なのは、あんなカラッポなスケコマシの虜にされてしまう、女性達にどうしても共感出来ない事です。

理屈を超えた魅力があるって、言葉で言うのは簡単だけど、映像として表現するならば、光くん役のキャスティングは何よりも重要なポイントだと思うのですが…

あの生田とかいう人では、あまりにも魅力が足りな過ぎるんじゃないでしょうか? 光くんのモデルになった藤原道長=東山紀之くんの方が数倍、スクスィーで魅力的だったけどなぁ…

東山くんに限らず、生田とかいう人以外のキャストには、何も文句はありません。特に豪華女優陣ですよね。

多部未華子さんはね、やっぱり凄いとしか言いよう無いですよ(ちょうど今日、カレンダー届いたぴょーんw)。

田中麗奈さんも素晴らしかったけど、生霊になってまで光くんに執着する六条御息所の役ですから、目立って当たり前と言えば当たり前。

それに対して多部ちゃんは、光くんの正妻・葵の上ですから、まぁ言えば地味な役、損なポジョンですよね、本来なら。出番も少ないし。

なのに、彼女の所作や表情、あの眼と、おでこと、声も、強く強く印象に残ってます。真木よう子さんや芦名星さんを軽く凌いで、麗奈ちゃんと同等ぐらいの存在感があったと思います。

でも、私が一番共感したのは、式部ちゃんでした。(本作は古典小説『源氏物語』と、それを紫式部がなぜ書いたのか?という2つのドラマが、時に交錯しながら同時進行します)

なにしろ作家さんですから、ストーリーは書いてみないとどう転ぶか分からないとか、登場する女性キャラがみんな作者の分身である事とか、いちおう私も作家のはしくれでしたから、その辺はよく解るんです。

真面目なキャラも、傲慢なキャラも、スケベなキャラも、全部自分の中にある性質を、それぞれ引っ張りだして投影させて行くんですよね。意識しなくても自然とそうなっちゃう。

作家によって書き方は色々あると思うんだけど、私は『つばさ』みたいに事前に細部まで詰めて計画的に組み立てるのが実は苦手で、書いてみないと分からないっていう式部ちゃんに近いタイプでした。

書きながら考えるというよりも、自分が物語の中に入って、それぞれのキャラに憑依すると言うか、されると言うか。「キャラクターが勝手に動き出す」ってやつです。

式部ちゃんがそういうタイプの作家(実際はどうだったか知らないけど)だったからこそ、物語と現実が交錯したり、リンクする構成が成り立つんですよね。そこは大いに楽しめました。

でも『源氏物語』そのものは、やっぱ評判どおり、ちょっと眠かったですね。途中、何度か落ちてしまい、目が覚めたら多部ちゃんのシーンになっててw焦ったりもしました。

ただ、世界観は良かったと思います。豪華絢爛なセットや美術は勿論ですが、平安時代の緩やかに流れる時間と、鳥の声や衣擦れの音、唇を吸い合う音まで生々しくw聞こえるような、静けさが実に心地良かったですね。だから睡魔に襲われるワケですが(笑)。

PS. 隣町の小さな、そして唯一のシネコンで観たのですが、映写が酷いピンボケで、観るに耐えられず映画館スタッフに知らせる為に、途中で席を立つ羽目に。

それで調整してくれたものの、完璧には合わないまま妥協。後でクレームをつけたら、映写レンズの不調でやむなしとの事。

私は細かい事にクレームをつけるタイプとは全然違うのですが、本当にとんでもないピンボケだったんです。1700円も払わせて、まったく酷い話です。

それが無ければ、作品の印象はもっと良かったかも知れません。映画館で観るのも善し悪しですな…

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