再びyamarineさんのお薦めシリーズです。ジョン・ウェイン主演の西部劇『勇気ある追跡』を、スピルバーグ製作&コーエン兄弟監督でリメイクした2010年の作品です。
私は西部劇を数多くは観てないのですが、『明日に向かって撃て!』や『許されざる者』みたいに、徹底したリアリズムで描かれた作品は大好きです。本作はその系譜に入るかと思います。
そして、父親を殺された14歳の少女が、自分でお金を工面して連邦保安官を雇い、犯人探しの旅に出る…ってなプロットを聞くだけでワクワクしますよね?
まず、その少女=マティ(ヘイリー・スタインフェルド=画像)のキャラクターが素晴らしい! 凛とした佇まい、荒くれ男を前にしてもひるまない度胸、難しい交渉事も口八丁でこなす頭の良さ、そして絶対に諦めない意志の強さ。
それでいて、ちゃんと普通の女の子としての弱さや繊細さも併せ持つように見えるのは、演じたヘイリーちゃんならではの持ち味と演技力の賜物かと思います。多部ちゃんと同じで、美人にもブサイクにも見えるファジーなお顔が効いてますよね。
保安官を雇う時に、人探しが巧いタイプと、目的の為なら手段を選ばない無頼漢タイプ、人権を重んじる平和主義者タイプの三択を迫られるんだけど、彼女は迷わず無頼漢を選んじゃう。そこでニヤリと笑う表情に、私はシビレましたよw
その無頼漢を演じるのが、名優ジェフ・ブリッジス です。無頼と言ってもアル中の老いぼれガンマンで、自分勝手だし信用出来るかどうか分からない。
さらに、テキサス・レンジャーにいた事をやたら自慢する、胡散臭い賞金稼ぎも旅に同行するんだけど、演じてるのがマット・デイモンなんですよね! 髭面だし帽子被ってるから、私は最後のクレジットを見るまで彼だと気づきませんでしたw
とにかく二人共、利己主義でちっとも優しくないし、マティが同行するのを足手纏いだと思ってる。そんなロクでもない男二人が、何があっても諦めないマティの根性と勇気に、少しずつ感化されていく。
特に天涯孤独な無頼漢・ジェフの方は、知らず知らず父性に目覚めてるような節がありましたね。彼が最後にとる行動は、涙なくして見られません。
また、その場面の映像が実に美しい事も特筆しておきます。画には無頓着な私ですら、そこは思わず息を呑むほどでした。
だからと言って、日本映画みたいに泣ける台詞、泣ける音楽で無理やり盛り上げるような記号演出も、ヨダレや鼻水を垂らして見せれば「熱演」だと勘違いしてるようなクッサイ芝居も、この映画には一切出て来ません。
弱冠14歳のマティですら、一滴の涙も見せませんから。西部劇って基本的にドライな世界なのかも知れませんが、本作は特に「人の死」をとことんドライに捉えてる感じがしました。
例えば葬儀屋の場面で、マティは父親の遺体を前にして「お父さんにキスしてもいいよ」って言われても「どうせ魂は抜けてるわ」って断っちゃうんですよね。
凡庸な演出家なら、ここぞとばかりにヒロインを泣かせて、観客の同情と共感を誘って感情移入させようとする所です。これが日本映画のヒロインなら、遺体にすがりついて「お父さん! どうしてなの!? お父さーんっ! うわわぁーっ!!」って、じゃかぁっしいわっ!!
それがこの映画のマティを見ると、あえて泣かずに耐えてるヒロインの姿にこそ、我々は知らず知らず共感してますよ。
それとやっぱり、西部開拓時代の空気ってものがある筈です。その時代に生きたワケじゃないから想像でしかないけど、いつ身近な人が撃たれて死んでもおかしくない環境にずっといれば、人の死にいちいち動揺してられないだろうと思います。
だから、日本の時代劇…例えば昨年の大河ドラマ『江』みたいに、戦国時代の最中だってのに、誰か死ぬ度にみんな揃ってオイオイ泣くなんて事はあり得んじゃろ!って、私などは思っちゃいます。
そんなワケですので、この映画には当然ながら派手なアクションはありませんし、日本映画みたいに「はい、ここで笑って!」「ここ、泣き所ですよ! さぁ泣いて今泣いて早く泣いて!」と言わんばかりの、分かり易くて押しつけがましい見せ場も皆無です。
そんな作品ばっかり観てる観客が本作を観ても、たぶん物足りなく感じる筈です。「うーん、まぁ良かったんだけど、泣けなかったんだよなぁ」って、そんな感想を述べる人が、もしかすると日本人の大半かも知れません。
愚か者っ!!(by.榮倉奈々w)
いや実際、他の映画でもそんな感想を言う人が多いんですよホントに。「泣けなかったよ」って。泣けなきゃ映画じゃないと思い込んでる。そうやって亀山どもに刷り込まれてるんですよ!
もちろん、泣ける映画も素晴らしい。記号に反応して泣くんじゃなくて、自然に共感して泣ける映画は私も大好きです。
『トゥルー・グリット』も、前述のとおりジェフがマティの為にとった行動と、その美しい映像に思わず涙しちゃいましたけど、それはあくまで結果に過ぎません。泣かせる事を意識して創られた映画じゃないんです。
それこそが、映画やドラマの本来あるべき姿だと、私は思います。これは本物の映画です。もちろん、私からもお薦めします!
私は西部劇を数多くは観てないのですが、『明日に向かって撃て!』や『許されざる者』みたいに、徹底したリアリズムで描かれた作品は大好きです。本作はその系譜に入るかと思います。
そして、父親を殺された14歳の少女が、自分でお金を工面して連邦保安官を雇い、犯人探しの旅に出る…ってなプロットを聞くだけでワクワクしますよね?
まず、その少女=マティ(ヘイリー・スタインフェルド=画像)のキャラクターが素晴らしい! 凛とした佇まい、荒くれ男を前にしてもひるまない度胸、難しい交渉事も口八丁でこなす頭の良さ、そして絶対に諦めない意志の強さ。
それでいて、ちゃんと普通の女の子としての弱さや繊細さも併せ持つように見えるのは、演じたヘイリーちゃんならではの持ち味と演技力の賜物かと思います。多部ちゃんと同じで、美人にもブサイクにも見えるファジーなお顔が効いてますよね。
保安官を雇う時に、人探しが巧いタイプと、目的の為なら手段を選ばない無頼漢タイプ、人権を重んじる平和主義者タイプの三択を迫られるんだけど、彼女は迷わず無頼漢を選んじゃう。そこでニヤリと笑う表情に、私はシビレましたよw
その無頼漢を演じるのが、名優ジェフ・ブリッジス です。無頼と言ってもアル中の老いぼれガンマンで、自分勝手だし信用出来るかどうか分からない。
さらに、テキサス・レンジャーにいた事をやたら自慢する、胡散臭い賞金稼ぎも旅に同行するんだけど、演じてるのがマット・デイモンなんですよね! 髭面だし帽子被ってるから、私は最後のクレジットを見るまで彼だと気づきませんでしたw
とにかく二人共、利己主義でちっとも優しくないし、マティが同行するのを足手纏いだと思ってる。そんなロクでもない男二人が、何があっても諦めないマティの根性と勇気に、少しずつ感化されていく。
特に天涯孤独な無頼漢・ジェフの方は、知らず知らず父性に目覚めてるような節がありましたね。彼が最後にとる行動は、涙なくして見られません。
また、その場面の映像が実に美しい事も特筆しておきます。画には無頓着な私ですら、そこは思わず息を呑むほどでした。
だからと言って、日本映画みたいに泣ける台詞、泣ける音楽で無理やり盛り上げるような記号演出も、ヨダレや鼻水を垂らして見せれば「熱演」だと勘違いしてるようなクッサイ芝居も、この映画には一切出て来ません。
弱冠14歳のマティですら、一滴の涙も見せませんから。西部劇って基本的にドライな世界なのかも知れませんが、本作は特に「人の死」をとことんドライに捉えてる感じがしました。
例えば葬儀屋の場面で、マティは父親の遺体を前にして「お父さんにキスしてもいいよ」って言われても「どうせ魂は抜けてるわ」って断っちゃうんですよね。
凡庸な演出家なら、ここぞとばかりにヒロインを泣かせて、観客の同情と共感を誘って感情移入させようとする所です。これが日本映画のヒロインなら、遺体にすがりついて「お父さん! どうしてなの!? お父さーんっ! うわわぁーっ!!」って、じゃかぁっしいわっ!!
それがこの映画のマティを見ると、あえて泣かずに耐えてるヒロインの姿にこそ、我々は知らず知らず共感してますよ。
それとやっぱり、西部開拓時代の空気ってものがある筈です。その時代に生きたワケじゃないから想像でしかないけど、いつ身近な人が撃たれて死んでもおかしくない環境にずっといれば、人の死にいちいち動揺してられないだろうと思います。
だから、日本の時代劇…例えば昨年の大河ドラマ『江』みたいに、戦国時代の最中だってのに、誰か死ぬ度にみんな揃ってオイオイ泣くなんて事はあり得んじゃろ!って、私などは思っちゃいます。
そんなワケですので、この映画には当然ながら派手なアクションはありませんし、日本映画みたいに「はい、ここで笑って!」「ここ、泣き所ですよ! さぁ泣いて今泣いて早く泣いて!」と言わんばかりの、分かり易くて押しつけがましい見せ場も皆無です。
そんな作品ばっかり観てる観客が本作を観ても、たぶん物足りなく感じる筈です。「うーん、まぁ良かったんだけど、泣けなかったんだよなぁ」って、そんな感想を述べる人が、もしかすると日本人の大半かも知れません。
愚か者っ!!(by.榮倉奈々w)
いや実際、他の映画でもそんな感想を言う人が多いんですよホントに。「泣けなかったよ」って。泣けなきゃ映画じゃないと思い込んでる。そうやって亀山どもに刷り込まれてるんですよ!
もちろん、泣ける映画も素晴らしい。記号に反応して泣くんじゃなくて、自然に共感して泣ける映画は私も大好きです。
『トゥルー・グリット』も、前述のとおりジェフがマティの為にとった行動と、その美しい映像に思わず涙しちゃいましたけど、それはあくまで結果に過ぎません。泣かせる事を意識して創られた映画じゃないんです。
それこそが、映画やドラマの本来あるべき姿だと、私は思います。これは本物の映画です。もちろん、私からもお薦めします!