松浦亜弥主演の映画『スケバン刑事/コードネーム=麻宮サキ』をようやく観ました。
「あややでスケバン刑事を」っていう発想は良かったと思うんです。一応は刑事物である『亜弥のDNA』を僭越ながら撮らせて頂いた時から、女優としても天性の何かを持ってる人だと感じてましたし、そのアイドル・マシーン的な佇まいは活劇の世界でも映える筈だと思ってましたから。
そして画像を観て頂ければお判りのように、彼女の眼つきはなかなか鋭くて、睨まれるとけっこう怖いw(多部ちゃんには及びませんがw)
逆にスケバン役がハマり過ぎて、お嬢ちゃんが無理して凄んでるみたいな歴代のスケバン刑事達と比べて、ギャップが無くて逆につまんないかも?って思う位です。
ただ、鼻にかかった甘い声には笑っちゃう位のギャップがありますから、21世紀の『スケバン刑事』としては成立してると私は思います。ギャップがあればこそのスケバン刑事ですから。(ちなみに斎藤由貴さんの娘っていう設定です)
それよりも私が危惧してたのは、まず製作がセントラル・アーツ社である事。TV版『探偵物語』や『あぶない刑事』等、横浜を舞台にした軽妙酒脱なアクション物を得意とするプロダクションです。
『スケバン刑事』は極めてバカバカしい事を大真面目にやる、大映ドラマ的な泥臭さが面白かったのであって、危険な捜査を遊び感覚でオシャレに楽しむ『あぶ刑事』等とは、まるっきり真逆の世界観なんですよね。
さらに、監督が深作二世(健太)である事。デビュー作『バトルロワイヤル2』を観た限りだと、人物描写にもアクション演出にもセンスが感じられず、正直言ってお父上みたいな才能があるとは思えません。
その不安が見事に的中しちゃいました。あややという素材が活かされず、『スケバン刑事』ならではの魅力も破壊され、つまんなかったです。
まずアクションシーンが少な過ぎるし、それを補うドラマ部分にハートが感じられず、著しく中だるみして何度も途中で睡魔に襲われました。
原因はハッキリ判ります。前回ちょっとだけレビューした『仮面ライダー』の映画と同じで、キャラクターの心情よりもストーリーの展開が優先されてるから、感情移入しづらいんです。最近のメジャー邦画やTVドラマ全般にも言える事ですが…
どういう事かと言いますと、本来ならキャラクターがストーリーを引っ張るべきなのに、ストーリーがキャラクターを引っ張ってる。人物がチェスの駒みたいに扱われてるワケなんです。
例えば仮面ライダーの映画だと、途中で主人公が実は敵組織の黒幕だった!みたいなどんでん返しがある。もちろん敵に騙されてる設定なんだけど、別に洗脳されたワケでもないのに「ふっふっふ、死ね!」とか言って悪役になりきってて、完全にキャラが破綻しちゃってる。
そうなるともう、観てる我々は主人公がどういう人間なんだか解らなくなって、感情移入出来なくなっちゃうワケです。いくら仮面ライダーでも、支離滅裂な人間を応援する気にはなれませんからね。
今回のあややも、場面によってキャラが変わっちゃってて、一貫性が無い。キャラクターがストーリーを動かすんじゃなくて、ストーリー展開に合わせてキャラクターが動かされてるもんだから、色々と矛盾が出てくるワケです。
脚本はベテランの丸山昇一さんですから、計算の上でキャラクターを多面的に描かれたと思うんだけど、監督に演出力が無いもんだから、各場面のあややがスムーズに繋がってないんです。
演出力うんぬんよりも、監督さんは人物の内面を描く事に興味が無いのかも知れません。北村龍平を筆頭に、アクション映画しか撮らない監督にはそういう人が多いみたいです。
それならいっそ、ひたすらアクション、アクションで押し通してくれればいいのに、下手に友情とか恋愛、親子愛、社会問題まで、興味ないクセにやたら盛り込むから、全てが消化不良で中だるみしちゃう。
私個人の感想としては、かつてTVシリーズを撮られてたベテラン監督や脚本家にお任せした方が、(例え古臭くなったとしても)断然面白くなってたと思います。セントラル・アーツも深作二世も『スケバン刑事』には合わないですよ。
それを決定的に感じたのはクライマックス、「何の因果かマッポの手先…」でお馴染みの、麻宮サキが敵集団を前にして口上を述べ、啖呵を切るお約束の場面です。
それを聞いた敵(若造)の一人が「こいつ、バカじゃね?」ってな風にせせら笑うんだけど、深作二世の描くネットゲーム的な冷めた世界観だと、そうなっちゃうんですよね。口上や啖呵…つまり熱血チックな芝居が完全に浮いちゃう世界なんです。
だから観客の眼にも、麻宮サキがホントの馬鹿みたいに見えちゃう。それじゃ駄目でしょう? そのへんも、前回の仮面ライダー映画における、熱血昭和ライダーの浮きっぷりと似てますw
私は別に、昔のスケバン刑事にこだわってるワケじゃありません。新しい麻宮サキ像を描くなら描くで大歓迎です。でも、チグハグな世界観や一貫性の無いキャラに、魅力は感じられません。
なんか、意味不明な場面も多かったんですよねぇ。それは決して演出上の計算じゃなくて、単純に描き切れてない、伝えるべき事を観客に伝えるスキルが足りてないからだと、私は感じました。
まぁ「スケバン」って呼称も死語になりつつある今、この企画をやる意味があったかどうかも疑問ですが、あややとしては初の単独主演映画です。彼女の魅力と才能を120%活かせる監督さんに撮って欲しかったですねぇ…
アイドルの旬は短いとは言え、この映画を最後に彼女の目立った活躍が見られなくなったのは、とても残念です。
「あややでスケバン刑事を」っていう発想は良かったと思うんです。一応は刑事物である『亜弥のDNA』を僭越ながら撮らせて頂いた時から、女優としても天性の何かを持ってる人だと感じてましたし、そのアイドル・マシーン的な佇まいは活劇の世界でも映える筈だと思ってましたから。
そして画像を観て頂ければお判りのように、彼女の眼つきはなかなか鋭くて、睨まれるとけっこう怖いw(多部ちゃんには及びませんがw)
逆にスケバン役がハマり過ぎて、お嬢ちゃんが無理して凄んでるみたいな歴代のスケバン刑事達と比べて、ギャップが無くて逆につまんないかも?って思う位です。
ただ、鼻にかかった甘い声には笑っちゃう位のギャップがありますから、21世紀の『スケバン刑事』としては成立してると私は思います。ギャップがあればこそのスケバン刑事ですから。(ちなみに斎藤由貴さんの娘っていう設定です)
それよりも私が危惧してたのは、まず製作がセントラル・アーツ社である事。TV版『探偵物語』や『あぶない刑事』等、横浜を舞台にした軽妙酒脱なアクション物を得意とするプロダクションです。
『スケバン刑事』は極めてバカバカしい事を大真面目にやる、大映ドラマ的な泥臭さが面白かったのであって、危険な捜査を遊び感覚でオシャレに楽しむ『あぶ刑事』等とは、まるっきり真逆の世界観なんですよね。
さらに、監督が深作二世(健太)である事。デビュー作『バトルロワイヤル2』を観た限りだと、人物描写にもアクション演出にもセンスが感じられず、正直言ってお父上みたいな才能があるとは思えません。
その不安が見事に的中しちゃいました。あややという素材が活かされず、『スケバン刑事』ならではの魅力も破壊され、つまんなかったです。
まずアクションシーンが少な過ぎるし、それを補うドラマ部分にハートが感じられず、著しく中だるみして何度も途中で睡魔に襲われました。
原因はハッキリ判ります。前回ちょっとだけレビューした『仮面ライダー』の映画と同じで、キャラクターの心情よりもストーリーの展開が優先されてるから、感情移入しづらいんです。最近のメジャー邦画やTVドラマ全般にも言える事ですが…
どういう事かと言いますと、本来ならキャラクターがストーリーを引っ張るべきなのに、ストーリーがキャラクターを引っ張ってる。人物がチェスの駒みたいに扱われてるワケなんです。
例えば仮面ライダーの映画だと、途中で主人公が実は敵組織の黒幕だった!みたいなどんでん返しがある。もちろん敵に騙されてる設定なんだけど、別に洗脳されたワケでもないのに「ふっふっふ、死ね!」とか言って悪役になりきってて、完全にキャラが破綻しちゃってる。
そうなるともう、観てる我々は主人公がどういう人間なんだか解らなくなって、感情移入出来なくなっちゃうワケです。いくら仮面ライダーでも、支離滅裂な人間を応援する気にはなれませんからね。
今回のあややも、場面によってキャラが変わっちゃってて、一貫性が無い。キャラクターがストーリーを動かすんじゃなくて、ストーリー展開に合わせてキャラクターが動かされてるもんだから、色々と矛盾が出てくるワケです。
脚本はベテランの丸山昇一さんですから、計算の上でキャラクターを多面的に描かれたと思うんだけど、監督に演出力が無いもんだから、各場面のあややがスムーズに繋がってないんです。
演出力うんぬんよりも、監督さんは人物の内面を描く事に興味が無いのかも知れません。北村龍平を筆頭に、アクション映画しか撮らない監督にはそういう人が多いみたいです。
それならいっそ、ひたすらアクション、アクションで押し通してくれればいいのに、下手に友情とか恋愛、親子愛、社会問題まで、興味ないクセにやたら盛り込むから、全てが消化不良で中だるみしちゃう。
私個人の感想としては、かつてTVシリーズを撮られてたベテラン監督や脚本家にお任せした方が、(例え古臭くなったとしても)断然面白くなってたと思います。セントラル・アーツも深作二世も『スケバン刑事』には合わないですよ。
それを決定的に感じたのはクライマックス、「何の因果かマッポの手先…」でお馴染みの、麻宮サキが敵集団を前にして口上を述べ、啖呵を切るお約束の場面です。
それを聞いた敵(若造)の一人が「こいつ、バカじゃね?」ってな風にせせら笑うんだけど、深作二世の描くネットゲーム的な冷めた世界観だと、そうなっちゃうんですよね。口上や啖呵…つまり熱血チックな芝居が完全に浮いちゃう世界なんです。
だから観客の眼にも、麻宮サキがホントの馬鹿みたいに見えちゃう。それじゃ駄目でしょう? そのへんも、前回の仮面ライダー映画における、熱血昭和ライダーの浮きっぷりと似てますw
私は別に、昔のスケバン刑事にこだわってるワケじゃありません。新しい麻宮サキ像を描くなら描くで大歓迎です。でも、チグハグな世界観や一貫性の無いキャラに、魅力は感じられません。
なんか、意味不明な場面も多かったんですよねぇ。それは決して演出上の計算じゃなくて、単純に描き切れてない、伝えるべき事を観客に伝えるスキルが足りてないからだと、私は感じました。
まぁ「スケバン」って呼称も死語になりつつある今、この企画をやる意味があったかどうかも疑問ですが、あややとしては初の単独主演映画です。彼女の魅力と才能を120%活かせる監督さんに撮って欲しかったですねぇ…
アイドルの旬は短いとは言え、この映画を最後に彼女の目立った活躍が見られなくなったのは、とても残念です。