サイレント映画からトーキー映画への過渡期における、ハリウッド・スターの挫折と再生を描いた21世紀のサイレント映画(モノクロ)。アカデミー賞穫ってましたね。
サイレント映画っていうのはつまり、音が無くて映像だけでストーリーを伝える、最も原始的な手法の映画です。
我々世代が子供の頃には、チャップリンやキートンのサイレント喜劇がテレビの地上波で普通に放映されてましたけど、今の若い世代はなかなか観る機会が無いですよね。
私自身は父親の影響でチャップリンが大好きになって、初めて自分で創った映画は放浪紳士チャーリーと寅さんのシリーズをミックスしたようなサイレント喜劇でした。
だから、この映画の世界観に私はすんなり入って行けるんだけど、若い人は戸惑うでしょうね。なぜ台詞が聞こえないの? 音楽はちゃんと聞こえるのに?なんて思うかも知れません。
最も原始的な手法でありながら、かなり最新技術は使われてるだろうと思います。80年以上前のハリウッドが舞台ですから、背景や群集はCGが使われてるんじゃないでしょうか?
映像の質感もサイレント時代のそれが再現されてて面白いです。最新技術があればこそ古さを表現出来るワケですから。日本における『三丁目の夕日』みたいなもんですね。
台詞が無いだけに、ストーリーは至ってシンプル。サイレント映画の大スターである主人公が、エキストラ女優のヒロインと純愛を育むんだけど、トーキー映画の隆盛と共に主人公は落ちぶれ、逆にヒロインがスターになっていく。
二人の心はすれ違い、主人公はどん底まで墜ちていくんだけど、最後は二人で力を合わせて、ミュージカル映画という新たなジャンルで復活への第一歩を踏み出す。
序盤のほのぼのした描写は観ててこそばゆくなるんだけど、話が悲劇に転じてからはグイグイ引き込まれました。話題になったワンちゃんの演技も抜群です。
ただ、ヒロイン役の女優さんが、ちょっと久本雅美さんに似てるんですよねw チャーミングだし明るいキャラなのは良いんだけど、あの時代のスター女優は、もっと正統的な美しさが求められたんじゃないのかなぁ? 久本さんが美しくないと言いたいワケじゃないけど…
それはともかく、映画への愛がいっぱい詰まった作品ですから、映画好きの方、特に古くからの映画ファンには絶対オススメの1本です。
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『アーティスト』
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