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『リーサル・ウェポン』

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これまで観て来たアクション映画の中でベスト3を選ぶとしたら、私の場合は1位『リーサル・ウェポン』、2位『96時間』、3位『キック・アス』といったラインナップになりそうです。

『リーサル・ウェポン』はもう25年も前(’87年)の作品ですから、今あらためて観るとさほどでもないかも?って思ってたんだけど、先日久々に(たぶん10年以上ぶりに)観てみたら、やっぱ「これ、好きやわぁ〜」って、再確認出来ました。

上記ベスト3作品に共通するのは、まず人間凶器(リーサル・ウェポン)と呼ぶべき人殺しのプロが登場する事。『96時間』のリーアム・ニーソンは元CIAの特殊工作員だし、『キック・アス』ではなんと小学生女子の殺し屋=ヒットガール(クロエ・グレース・モレッツ)が悪党どもを何の迷いも無くぶち殺しまくります。

その、ぶち殺される悪党どもが全く同情の余地も無い、根っから極悪非道な連中である点も3作とも共通してます。アクション映画の敵役はかくあるべし、ですね。悪ければ悪いほど最後にスカッとしますから。

そしてもう1つの共通点は、人生の歯車が狂った主人公が自らのアイデンティティを見失ってる状態にあり、壁を乗り越えたりトラウマを克服する事によって、復活や覚醒を遂げる物語である事。

『96時間』のリーアムは仕事中毒であったが為に妻娘に愛想を尽かされ、その絆を何とか取り戻したいと願う健気な中年男。『キック・アス』の主人公(アーロン・ジョンソン)は単純にオタクだからモテないだけなんだけど、外的要因が無いだけに余計ツライw

で、『リーサル・ウェポン』の主人公=マーティン・リッグス刑事(メル・ギブソン)は、最愛の妻を亡くしたばかりで生きる望みを失い、自殺願望に取り憑かれた発狂寸前の男なんですね。

だから、アクション映画の主人公にありがちな命知らずな行動にも、リッグスの場合はちゃんと感情の裏付けがある。なんせ今すぐにでも死にたがってる男だから、どんな無茶だって平気で出来ちゃうワケです。そして彼が無茶をすればするほど、観てる我々は泣けて来るという。

でも、彼はなかなか死ねません。彼は死にましぇーん! 彼は死にまっしぇーんっ!! というのも彼、元グリーンベレーの特殊工作員なもんだから、どんな凶悪犯が相手でも冷静に対処し、瞬殺出来るスキルを身につけちゃってるんですね。リーサル・ウェポンと呼ばれる所以です。

その人並み外れた屈強さと、根は優しいがゆえの内面の脆さ。その危ういバランスを保ってくれる唯一の存在だったであろう奥さんを失った事で、リッグスの精神は今やズタボロの状態なんです。

そんなリッグスを持て余したロス市警は、定年退職間近のベテラン刑事=ロジャー・マータフ(ダニー・グローバー)を彼の相棒にあてがいます。

温かい家庭を築いて引退も目前であるマータフにとってはとんだ災難で、バディ・ムービーの定石どおり最初は反目し合うワケですが、そこは温厚なベテラン刑事なだけあって、対立は長続きしません。

ズタボロになってるリッグスを、マータフとそのファミリーが温かく包み込み、癒やしていく過程がすごく良いんですよね。決して涙を押し売りする事なく、どちらかと言えばコミカルに描いてくれる演出が、実に私好みです。

で、そんな温かいマータフの家族に、敵の魔の手が伸びるワケですよ。娘が誘拐されちゃうんです。相手は極悪非道な麻薬組織。取引に応じたところで、娘が生きて返される可能性はゼロ。こちらから乗り込んで奪還する以外に道は無い。

そこで頼りになるのがリーサル・ウェポンですよ。敵を情け容赦なく撃って撃って撃ちまくり、夜のロス市街地を舞台に繰り広げる超絶アクション!

刑事物で戦争映画並みのハードなアクションを描いて見せたのって、この『リーサル・ウェポン』が最初だったかと思います(『ダイ・ハード』の登場はその翌年)。初めて劇場で観た時、私は鳥肌が立ちましたよホントに。

そしてクライマックス。リッグスと同じく元特殊工作員である敵の殺し屋=ヨシュア(ゲイリー・ビジー)に、リッグスは素手による果たし合いを挑むんですよね。これがまた痺れるんです!

自分自身のダークサイドが具現化したような存在であるヨシュアを、最も原始的な闘いである「殴り合い」によって倒したリッグスは、発狂寸前の状態から立ち直ります。

それが出来たのは、誰もが持て余してたリッグスという男を全面的に受け入れる、マータフという存在が現れたからこそなんですね。亡き妻に代わって、リッグスの精神バランスを保ってくれる新たなパートナー。

ドンパチばかりのB級アクションと見られがちな『リーサル・ウェポン』だけど、実はとても繊細な人間ドラマでもあるんですね。だからこそのベスト1なんです。

メル・ギブソンがまた、一世一代のハマり役でした。『マッド・マックス』シリーズでスターになってから薬物依存に陥り、荒んだ生活を経た上での復帰作が『リーサル・ウェポン』って事で、自暴自棄になってるリッグス刑事とイメージが重なります。

そして相方=ダニー・グローバーとの奇跡的な相性の良さ。職人リチャード・ドナー監督のツボを心得た演出、シェーン・ブラックのシンプルでメリハリの効いた脚本、マイケル・ケイメンとエリック・クラプトンのコラボによるハードかつポップなサウンドトラック。

何よりシリアスとコミカルの絶妙なバランスが、完璧に私のツボにハマったんですよね。文句無しです。アクション映画として私の好きな要素を全て備えてる作品が、この『リーサル・ウェポン』なワケです。

客観的に1つだけ難点を言えば、アクションの見せ場が物語の後半に集中してるんで、今の眼で観ると前半がやや退屈に感じられるかも知れません。昨今のアクション映画は序盤から飛ばして行く作品ばかりですから。

その点、キャラクター紹介が不要になった続編『リーサル・ウェポン2』は冒頭から派手なカーチェイスが描かれ、全編にバランス良く見せ場が配分されてます。

しかも外交官特権を振りかざす難敵に加えて、なんとリッグスの妻を事故に見せかけて暗殺した殺し屋までが登場し、おまけに同僚刑事達も皆殺しにされるわで、物語のボルテージは最高潮に達します。

それだけにリッグス&マータフが敵を片っ端からぶっ殺すクライマックスの高揚感はハンパじゃなく、そのカタルシスたるや、両手で左右の乳首をつまんで15回ほど回しても追いつかないレベルです。

だから『2』をシリーズ最高傑作と捉えるファンが多いんだけど、そこはやっぱ『1』あればこその『2』ですから、私としては『1』を強く支持したいと思います。

このシリーズは同じキャスト&スタッフで更に続いて行く事になります。『2』で奥さんの仇討ちまで果たしたリッグスは完全に立ち直ったワケですが、『3』になっても相変わらずのクレイジーぶりで、実は生まれつき危ない人だった事が判明しますw

『2』から登場するペテン師のジョー・ペシ、『3』から登場してリッグスの新たな妻となるレネ・ルッソ、更に『4』から登場の三枚目刑事クリス・ロックと、ファミリーが増えれば増えるほど『リーサル・ウェポン』はホーム・コメディ化しちゃいます。

それはそれで楽しいし、凡百のアクション映画よりよっぽどクォリティーも高いんだけど、『1』『2』があまりに良すぎた為に『3』『4』はどうしても見劣りしちゃいますね。

ただし『4』にはハリウッド映画初出演のジェット・リーが冷酷な殺し屋役で登場、クールな演技と超人的な立ち回りを披露し、緩み切った空気をビシッと引き締めてくれます。

とにかく面白さは絶対保証の『リーサル・ウェポン』シリーズ。ゴールデンウイーク中は旧作のレンタル料が格安になってますから、未見の方はこの機会に、是非!

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