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『特捜最前線』

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そう言えば、このブログで『特捜最前線』について語った事が無いんですよね。刑事ドラマ史において、渋いポジションですが非常に重要な作品の1つだと思います。

スタートしたのは1977年、終了が87年ですから、なにげに10年も続いた人気番組なんですよね。『太陽にほえろ!』以降、それ以外の刑事ドラマで10年のロングランに達したのは、唯一『特捜最前線』だけじゃないでしょうか?(『踊る大捜査線』や『相棒』も長いけど、何度も合間にブランクを挟んでますから、10年以上続いたとは言えません)

遡れば『特別機動捜査隊』という長寿番組があって、その後を受けて『特捜』がスタート、『太陽』や『Gメン75』等と共に刑事ドラマの黄金時代を築き上げ、やがてトレンディードラマの時代が来ても『はぐれ刑事純情派』そして『相棒』へと、地味だけど質の高い刑事ドラマの伝統を、同じテレ朝水曜夜9時の枠で継承してます。

しかし私は放映当時『特捜』を敬遠してました。正直言えば、ちょっと馬鹿にしてさえいたんです。理由はまず、地味であったこと。そして、刑事達の芝居が暑苦しかったw まだ子供だった私には、その良さが理解出来なかったんですね。

『太陽にほえろ!』がオールラウンドなポップスなら、『Gメン75』や『大都会』はとんがったロック、そして『特捜最前線』はド演歌の世界ですよw あくまでイメージの話です。

キャスト達の芝居も、『太陽』チームは石原裕次郎さんが中心なだけあって皆さん自然体でした。対して『特捜』チームのやたら気張った台詞回しや必死の形相は、当時の私の眼には下手っぴぃにしか見えなかったんです。

だけど最近になってCS放送等であらためて観てみたら、ものすごく面白いドラマだった事に気づいたんですよね。地味に感じたのはリアリズムを追求してたからだし、暑苦しく見えた芝居は、主役の刑事達が常に極限の状況に追い込まれてたから。つまりドラマの内容そのものが、他の刑事物よりハードだったんです。

つい最近、家庭教師を斡旋する会社のCMで、故・二谷英明さんが必死の形相で街を走ったり、男をぶん殴ったりする映像が使われてましたが、それが『特捜最前線』ですw

おそらくあの映像は、プルトニウムを盗んだ男が自作の核爆弾を街のどこかに仕掛けちゃったという『特捜』初期のエピソード(『太陽を盗んだ男』より前だったと思います)から引用されたものです。早く犯人を逮捕して爆弾の在処を聞き出さないと、東京が壊滅してしまう。だからあんな形相になってるワケです。

リアリズムを追求してると先に書きましたが、その反面、こういう思い切った内容のストーリーを大真面目に描き切っちゃうのも『特捜』の凄さなんですよね。『太陽』はもちろん、『西部警察』でさえ核爆弾まで登場させる程のアグレッシブさは無かったように思います。

かと思えば、故・大滝秀治さん(画像)はテレホンセックス魔と刑事生命を賭けて対決するし、藤岡弘さんは容疑者を吐かせるためにシャブ漬けにしてしまう! 刑事がシャブ漬けにされちゃう話は他の番組でもやってるけど、その逆は空前絶後ですよね多分w

ちなみに、西田健さんという役者さんが犯人役の常連で、当時にしてサイコパスな犯罪者を演じたら天下一品! 上記のプルトニウム爆弾魔もテレホンセックス魔も、共にこの西田さんが演じておられますw

特にテレホンセックス魔の話が絶品で、刑事生命を賭けてまでイタズラ電話を阻止しようとする大滝さんも凄いけどw、犯人側も人生を賭けて刑事と対決しますからね! たかがイタズラ電話ですよ?w

犯人が西田さんだと確信した大滝さんは「貴様!『奥さん、テレホンセックスしましょ』って、電話しただろ!?」って詰問するんだけど、証拠が無いから逮捕は出来ない。

するとその夜、被害者の家に電話がかかって来て、大滝さんの声で「奥さん、テレホンセックスしましょ!」ってw 密かに録音してたワケですね。これで奥さんは発狂しちゃうw こういう事をこの人達は毎週、必死の形相で真剣にやってたんです。

とにかく熱い! 暑苦しい!w でも、それは彼らが常に真剣で、どんな事にでも命懸けで取り組むからなんです。だから、我々も観る時には姿勢を正さなければなりません。

こういう熱いドラマは、時に笑えるけどw、同時に泣けるんですよね。『特捜』は号泣率がハンパじゃない。『太陽』にも泣けるエピソードは少なくないけど、号泣までさせられるのは『特捜』ならではの特色だと思います。

どうですか、観たくなって来ませんか? たぶん私と同じように、ド演歌チックなイメージで食わず嫌いしてた方も多いんじゃないかと思いますが、もし機会があれば騙されたと思って、一度ご覧あれ。

初期には西田敏行さんもレギュラー出演されてますし、藤岡さんはじめ荒木しげる、誠直也、夏夕介といった特撮ヒーロー出身の熱い役者さん達が刑事を演じてられるのも見所です。

だけど一番のオススメはやっぱり、大滝秀治さんですよね。どんな台詞を喋っても味がある上に、「あんたがオシメを着けてた時から私は刑事をやってんだ!」とか「こちとら伊達や酔狂でアタマ禿げ散らかしてんじゃないんだよ!」とか「昨日のビールも今日のションベン! 変わっちまうもんさっ!」等、数々の名言を残しておられます。関根勤さんのモノマネより面白いですよw

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