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続・憩いのひととき

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そんなワケで、私にとって『太陽にほえろ!』鑑賞は「癒し」であり、リフレッシュの時間なんです。だから此処でレビューする為に観る作品とはハッキリ線引きしてるんだけど、こないだ『デカワンコ』と二本立てで観たエピソードにはちょっと感じるものがありましたんで、ご紹介したいと思います。

その時に観たのは第575話『向い風』というエピソード。本放映は1983年の11月4日で、当時私は高校3年生でした。

この前年(番組開始10周年)に『太陽にほえろ!』は大幅なメンバーチェンジをしており、初回から残ってるのはボス(石原裕次郎)と山さん(露口茂)だけ。あとはトシさん(地井武男)、ドック(神田正輝)、ボギー(世良公則)、ラガー(渡辺徹)、ブルース(又野誠治)、そして今回の主役・マミー刑事(長谷直美)が当時のメンツです。

マミーには殉職した夫・ロッキー刑事(木之元亮)との間に生まれた双子の幼い子供・裕太と陽子がいて、勤務中はマミーのマミー(つまり祖母)が二人の面倒を見てくれてます。

ところがある日、二人を公園で遊ばせてたマミーのマミーがちょっと目を離したスキに、陽子と、同じ公園にいた近所の子供とが行方不明になっちゃう。

すわ誘拐か!?って事になるんだけど、翌朝、子供らは無事に帰って来ます。まだ1歳とか2歳とかなんで、誰に連れて行かれて一晩何をしてたのか証言は得られない。ただ、お腹を壊しちゃう位にお菓子を食べさせられたらしい事だけが判明します。

犯人の目的は何なのか? もしかするとマミーが刑事だから恨みを買い、娘の陽子が狙われて、近所の子は巻き込まれただけじゃないのか?と、公園に集う主婦たちは噂します。

そして翌日、今度は裕太と、また近所の子供1人が行方不明になり、同じように満腹になって帰って来た! こりゃ確実にマミーの子供がターゲットだろって事になって、マミー母子は公園の主婦たちから避けられ、完全に孤立しちゃいます。

子供らには何の罪も無い。マミー自身だって、真面目に働いて子供らを養ってるだけなんです。なのに、近所の主婦達から白い眼で見られ、除外されようとしてる。自分は刑事を辞めるべきなのか? マミーは苦悩します。

ところが、今度はマミーと全く関わりの無い子供がさらわれた事で状況が変わります。そして犯人も捕まります。子供らをさらってお菓子を与えてたのは、近所に住む男子高校生だった!

動機は、自分が母親から非常に厳しく育てられ、お菓子など一切食べさせてもらえなかったから。母親は結局、自分を捨てて家出してしまい、男子高校生は母親への恨みと歪んだ愛情が複雑に絡み合い、幼い子供に好きなだけお菓子を食べさせるという、異常な行為に走ってしまった。

そうする事で、自分の人生に欠落してたものを埋めたかったのか? ちょっと複雑過ぎて理解しがたいけど、例えば子供の時にあまりオモチャを買ってもらえなかった人が、その反動で大人になってからオモチャのコレクターになっちゃう、みたいなのと似た心理かも知れません。

『太陽にほえろ!』って、そんなドラマだったの?って思われるかも知れないけど、そうなんですよ! 『西部警察』とは全然違うんです!w 勿論アクションばりばりのエピソードもあれば、青春ドラマや恋愛ドラマ、ホームドラマに本格ミステリーと多種多様で、だけどちゃんと統一感もある。その守備範囲の広さや柔軟さも大きな魅力なんですね。

このお話は特に、日常の中で普通に起こりそうな事をネタにする(ご近所ネタが多いw)のが得意な、亜槍文代さんというライターさん(たぶん本業は主婦)が脚本を書かれてますから、そんな『太陽』の中でもちょっと異色な回ではあります。

さて、私がなんで今、このエピソードを見直す気になったかと言えば、実は多部ちゃんの『大奥』がきっかけなんです。犯人の男子高校生を演じてるのが、若き日の尾美としのり君(下画像)なんですよねw

エピソードの内容はほとんど忘れてて、ただ尾美くんがゲスト出演してた事だけが記憶に残ってました。で、長年の謎だったんです。当時すでに映画『転校生』等で注目されてた尾美くんなのに、出番がかなり少なくてチョイ役の印象しか残ってない。なんで尾美くんが、こんな小さな役で『太陽』に出たんだろう?って。

それが今回、30年ぶりに鑑賞してみて、謎が氷解しました。そうなんですよね、物凄く複雑な心理を表現しなくちゃいけない役だから、凡庸な若手俳優が演じたら台無しになっちゃう恐れがある。尾美くんクラスの実力派がどうしても必要だったんですね。

『相棒』が大成功した理由の一つに、ゲスト俳優のキャスティングにギャラを惜しまない事があるんじゃないかと私は思ってます。主役2人は別にして、レギュラー陣が揃って地味な分、ゲストがいつも豪華なんですよねw

『太陽』に限らず、昔の刑事ドラマを観てると、ゲスト俳優(特に若手)の芝居の拙さにゲンナリしちゃう事がしばしばあります。豪華なレギュラー陣にギャラを使い過ぎて、ゲスト俳優に一流どころをなかなか雇えなかったんだろうと思います。現在の番組とは逆なんですよね。

でも、この男子高校生の役はそういうワケには行かなかった。実際、「うーん、ちょっとこの設定は強引過ぎないか?」って思いながらも、尾美くんの独白シーンにはちゃっかり泣かされましたからね。いつものレベルの若手俳優だったら、話の強引さだけが印象に残って、失敗作になってたかも知れません。

それだけ、優れた俳優のもたらす力、ご利益は大きいって事ですよね。もし『大奥〜誕生』の家光役が、香里奈だったら? そりゃいくら何でもあり得ない?w じゃあ、よく引き合いに出される梅ちゃん先生だったとしても、しょっぱい結果に終わってた可能性は大ですよね。

上段の画像は、『太陽』の第339話『暴発』にゲスト出演された際の、森下愛子さん(33年前!)です。このエピソードもかなり前に「LOVE森下愛子」ってタイトルで記事にしました。

書いてた内容は同じですねw 凡庸なストーリーでも、1人のゲスト女優の魅力によって、特別なエピソードとして記憶に残っちゃう。俳優の力とご利益はホントに大きいなぁ、っていう記事でしたw

森下さんが出演された頃、番組は8年目位で、最も視聴率が安定してた時期。ゆえに予算が潤沢だったのか、注目株のフレッシュな若手女優さんが多数キャスティングされてました。

その中には大竹しのぶ、原田美枝子、石田えり、秋野陽子、岸本加世子etcと、現在も第一線で活躍し、多部ちゃんと共演されてる方々も含まれてます。もしご要望があれば、その方々の30数年前をまたご紹介したいと思ってます。ご当人はいい迷惑でしょうけどw

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