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『あしたのジョー』山ピー版

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ようやくCSで観ました。『三丁目の夕日』並みに昭和中期の景色を精密に再現したCGとセットに、まず感動しました。画面の色調もセピアとかじゃなく、当時に製作されてた日本映画の色合いで、あらゆる手を尽くして昭和を表現してる姿勢に好感を持ちました。

内容的にもほぼ原作に忠実で、とても真摯に創られてると感じました。昨年に放映された石橋正次バージョン(1970年公開)のレビューにも書きましたけど、そもそも原作のストーリーがシンプルで実に面白く出来てますから、下手なアレンジは必要無いですよね。

しかしアクション描写にせよドラマ演出にせよ本物志向で、’70年版よりずっと時間と手間が掛けられてます。CGも生かし方次第で素晴らしい効果を上げてくれる事を実証しましたね。予想外に良かったですよ、これ! ラストにゃ不覚にも泣いちゃいました。

挫折の美学が流行りだった頃の’70年版は、力石徹の死により矢吹ジョーがどん底に堕ちたまま終わっちゃいましたけど、山ピー版はジョーが復活に向けて立ち上がるまでが描かれてます。アニメだとパート2の冒頭部分に当たるのかな?

キャストに目を向けると、力石に扮した伊勢谷友介くんが今回は良かったです。今回に限ってはw 『十三人の刺客』じゃ何もかもぶち壊してくれましたけど、まぁ彼自身に罪は無いですからね。

丹下段平に扮した香川照之さん(画像右)は、やっぱ上手いですよね。コスプレ大会になるかと思いきや、そんなに違和感が無かったですから。作品全体がコンピューターで加工された世界ゆえ、特殊メイクが浮かずに済んだのかも知れません。

マンモス西に扮した勝矢さん(画像左)は、『GUN CRAZY Episode4』という映画でご一緒した事があります。私が演出した番外編ミニドラマで主演してくれた人なんですよw 素顔もフレンドリーこの上ない方で、このキャラにピッタリです。

ジョーを囲むドヤ街の子供達の中心にいる女子を演じてるのはなんと、『つばさ』の優花こと畠山彩香ちゃん。『妖怪人間ベム』の劇場版にも出てるそうで、そんなにお芝居が上手なワケでもないのにw、昭和っぽい素朴さが創り手達にウケるのかも知れませんね。

なぜこの人がメジャーな作品で次々にヒロインを演じてるのかサッパリ解らないのが、白木葉子に扮する香里奈ですよ。ハリソン・フォードすら登録されてないスマホで、なんでこの女の名前は一発で漢字変換出来るねん!?

力石やジョーに対する複雑な女ごころ、力石がわざわざ台詞で解説してくれなきゃ、サッパリ観客には伝わって来ません。女性観客に嫌われないこと以外に、この人を起用するメリットが私にはどうしても分かりません。

さて、肝心の矢吹ジョー=山下智久くんですが… 予想通りでした。力石と張り合ってた頃のジョーはまだまだ少年で、独特な軽さというか飄々とした感じが魅力だと私は思うんだけど、山下くんは基本的に大人びてて、重いんですよね。

ジョーが少年院から出所する際に、看守の人らが「いると厄介だが、いなくなると淋しい。不思議なヤツだよ」みたいな事を言うんだけど、イマイチ実感が伝わって来ない。自然と皆から愛されちゃうような明るさが、山下くんのジョーには無いんですよね。

彼がジョーを演じると聞いた時点から私はそれを危惧してたんだけど、ドラマ『MONSTERS』での三枚目ぶりを観て、もしかしたら杞憂だったかも?って思ったんです。

でも、やっぱ山下くんのジョーは暗い。ボソボソ言う台詞も全然聞き取れないし! 筋肉作る前に多部ちゃんから発声を教わりなさい!

…とまぁ、けっこう致命的な欠点もあるんだけど、ストーリーの面白さとクオリティーの高さで、かなりカバーされてると私は感じました。それだけに惜しい!

だからって、他に誰が矢吹ジョーを演じれば良かったのかって聞かれても答えられないけど… そもそも劇画キャラと生身の人間は全く違う物体ですから、ピッタリ合う人なんか存在するワケが無い。

そう思えば、今のメジャー映画で主役を張れるスターの中で、山下くんはベストなチョイスだったのかも知れません。

とにかく、あの『デビルマン』みたいに原作を冒涜するような失敗作にならなくて良かったと思います。熱狂的な『あしたのジョー』ファンの人から見れば、また違った評価になるかも知れませんが…

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