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孤独なプロフェッショナル

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昨夜のNHK『プロフェッショナル/仕事の流儀』に、脚本家の遊川和彦さんが登場しました。あの『家政婦のミタ』や『女王の教室』を手懸け、今度の朝ドラ『純と愛』も書かれてる売れっ子作家さんです。

『君に届け』の夏菜ちゃんが純、『それでも、生きてゆく』の風間俊介くんが愛(いとし)に扮する『純と愛』は、かなり面白くなるかも知れない…って、期待させられる内容でした。

まぁ、このタイミングで放映される=新番組の宣伝なワケですから、期待を煽るように創られてるワケなんだけど、それを差し引いてもなお、期待せずにはいられません。

なぜかと言えば、遊川和彦という脚本家が、物凄い曲者である事が判ったからですw いつも不機嫌顔で、口を開けば毒舌ばかり。アクが強いし我も強い、断じてお友達にはなりたくないタイプの方ですよw

「ありきたりな事は絶対にしたくない」が信条らしく、そりゃもう『ミタ』を観れば、その言葉通りに実践されてる事がよーく分かります。私は天海祐希主演『女王の教室』も何度か観ましたけど、あれも真っ向からありきたりを否定したドラマでした。

だから、少なくとも『梅ちゃん先生』みたいに、何もかも予定調和なドラマ、いかにも朝ドラらしい朝ドラには絶対にならないだろうって事です。視聴率40%番組『ミタ』の実績がありますから、制作側からの縛りも緩い(やりたい事がやり易い)状況だろうと思いますし。

断片的に紹介されたドラマ本編を見ても、激しく感情をぶつけ合うシリアスな場面ばっかりで、『梅ちゃん』のノホホン世界とは全く対照的ですw 朝から観るには暗いとか、ハード過ぎると言った批判は免れないんじゃないでしょうか?

『ミタ』もそうでしたけど、ただの良い人は一人も出て来ない、人間の本質をえぐり出すような作劇。それを朝っぱらからやっちゃうワケです。

そんな朝ドラを、最近観た気がしますねぇw 放映は何年も前だけど、私が観たのはつい最近です。そう、我らが多部ちゃんの『つばさ』ですね。

でも『つばさ』の場合、かなりはっちゃけたコメディーというオブラートに包まれてましたから、本質とは関係ない部分で叩かれてたような気がします。

だから多分、NHKの上層部は、『純と愛』が『つばさ』と同じようなチャレンジをしようとしてる事に、気づいてないんじゃないですか? 気づいてたら、させないでしょうw

なにしろ視聴率40%作家ですから、会議室の人らを黙らせるには充分な肩書きです。『カーネーション』をあんな形で幕引きさせた連中ですから、どうせ本質なんか見ちゃいないでしょう。

それはともかく、私が驚かされたのは、上の画像の場面です。左が夏菜ちゃん、右が風間くん、じゃあ奥で睨んでるオッサンは誰? そう、その人が遊川さんですw

脚本家が頻繁に撮影現場に現れて、俳優の芝居を間近で見て、「言い方が下品なんだよ!」とか、主演女優に向かって言い放つんですよ?w

納得いくまでリハを重ねさせ、時には俳優を泣くまで追い詰めて、ベストの演技を引き出して見せる。…っておいっ! そりゃ監督さんの仕事でしょうが!w

いや、最近は監督でも、俳優をとことん追い詰めるような演出をする人は、少なくなってるかも知れません。私もそういう事が出来ないタイプでした。

まして脚本家が、監督を差し置いて現場で演技指導するなんて、絶対にやっちゃいけない事だと、私は今の今まで思い込んでましたよ!

だって監督さんの立場が無くなるし、俳優さんからすれば「どっちの指示を聞けばいいの?」って話ですから。現場が混乱しちゃいますよ。

でも遊川さんの場合は、そういうスタンスで参加する事が大前提になってるんでしょうね。スタッフもキャストも全員、それを了解した上で受け入れてる感じです。

以前の遊川作品に主演された天海さんや管野美穂さんも、インタビューで異口同音に「遊川さんとの戦いの現場」「あんまり夏菜ちゃんを追い詰めないで」みたいな事を、笑いながら仰ってましたからねw

最初からそんな事が許される脚本家なんかいるワケなくて、これはもう遊川さんの長年に渡る実績と、繰り返して来た苦闘の賜物なんでしょう。

だから「孤独だよ」って、遊川さんは何度も仰ってました。そう言えば同じ『プロフェッショナル』の『高倉健スペシャル』でも、北野武さんが健さんについて「あの人の背中に孤独を見た。神格化されればされるほど、本人は孤独になっちゃうよね」みたいに言っておられました。

まぁ健さんの場合は、常に「高倉健であること」にこだわり続け、ストイックな姿しか世間に見せて来なかった結果、皆から崇められ、対等につき合える相手が少なくなったワケで、遊川さんとは孤独の質が違うかも知れません。

でもそれは、我々凡人にはとても出来ない事をやり続けた結果である点で、両者とも共通してると思います。孤独を覚悟しなければ、地位も名誉も得られないって事ですね。

しかも、両者とも地位や名誉が欲しかったワケじゃなくて、ただ良い作品を生む為だけに闘い続けて来た、その結果に過ぎないんですよね。だから格好良い。

そういう本物のクリエイターが舵をとってるんだから、『純と愛』がつまんない筈は無かろうと私は思うワケです。やり過ぎて失敗する可能性は、無きにしもあらずですがw

やっぱり夏菜ちゃんは追い詰められてましたね、かなり。当然、朝ドラの大先輩である多部ちゃんに相談したり愚痴を聞いてもらったりは、きっとしてる事でしょう。

果たして『ミタ』を超える大ヒットになるのか、それとも賛否両論真っ二つで、最低視聴率記録を更新するのか? 要注目ですね。

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