そんなものを欲しがるでない。お前はなぜ、よりによってそんなものを欲しがるのだ? 乳首だぞ? このわしの、乳首だぞ?
男のわしに乳首は必要無いとお前は思っているやも知れぬが、それはとんでもない誤解だ。授乳以外にも、乳首には使い道があるのだからな。乳首には、他にも重要な使い道があるのだ。
例えばだと? 例えば、それはお前、先週、新宿で… いや、知らぬ、知らぬ。わしは新宿などという場所へは行っておらぬ。行ったかも知れないが、憶えておらぬのだ。
違う、違う、そんな事はどうでもよいのだ。わしは新宿の話などしていない。わしは最近、ボクサー・ブリーフ党だ。長らくトランクスだったが、隙間無く密着する方がわしの性に合っている事に気づいたのだ。それに… 何を言おうとしてた? ん、何だった?
そうだ、お前は乳首など欲してはおらぬ。お前は、わしを困らせようとしているだけだ。わしは、お前に何でもやると誓った。しかし、乳首はいかん。乳首だけはいかんのだ。
そうだ、マジンガーZのフィギュアをやろう。超合金だぞ? 『太陽にほえろ!』のDVDはどうだ? あのドラマから刑事魂を教わったと言っておっただろう。着信音だって『太陽にほえろ!』のテーマだったではないか。
「わたしは、かわたべの乳首が欲しいの」
ならぬ、ならぬ、それは出来ぬ。良いか、サロメ、冷静にならんとな、ん? 冷静になるべきだぞ、違うか? お前は何もわかっていない。わしは乳首を二つしか持っておらぬ。たった二つの乳首で何が出来る? 何の悦びがあるというのだ? 何もない。駄目だ、駄目だ、そんなものを欲しがってはならん。
「かわたべの乳首を」
わかっておらんな、お前は。確かにわしは、お前を見つめすぎた。この一年半、わしはお前ばかりを見つめておった。お前の美しさは、わしの心を掻き乱した。お前の強い眼差しに、わしは心を奪われた。そして、わしはお前をあまりに見つめすぎたのだ。
おお! おお! 酒だ! わしは喉が乾いた。わしは今、ボクサー・ブリーフを穿いておる。お前も工藤ジュンを名乗っている時は、ブリーフを穿いておったのだろう? あっ、こら、蹴るな、蹴るでない。お前は、自分の蹴りの破壊力がわかっていない。むやみに人を蹴るもんじゃない。
あ、こら、痛い、痛い、わっはっは! もうちょっと下だ。そう、そこ、そこを踏んでくれ。優しく、時に強くだ。そう、いいぞ、そのまま、うひひひ…
どうだ、気持ち悪いか? お前は、こんな気持ち悪い人間の乳首を手にして嬉しいのか? 気持ち悪い人間の乳首は、たったの二つとは言え気持ち悪いであろう? どうだ?
「かわたべの乳首をちょうだい」
お前はわしの話をまるで聴いておらんのか? わしだって恥ずかしいのだぞ? まあ落ち着け、落ち着くのだ。わしか、わしは至って冷静だぞ。まったく冷静そのものだ。
いいか、よく聴け。お前は気がついておらぬかも知れんが、お前の身の周りは変態だらけだ。お前が誰と一緒にいようとお前だけを見つめ、お前が立ち寄った場所を後から訪れては、何枚も写真を撮る。お前は、まさか、その変態どもから声を掛けられて、返事などしてはおらぬだろうな? はーい、なんて。まさか、はーい、なんて。
ならぬ、ならぬ、わしが声を掛けても、お前は返事をせなんだ。それで良いのだ。返事などしてはならぬ。変態どもは、無視するに限る。だが、この次にわしが声を掛けた時には、何か言っても良いぞ。わしが許そうではないか。ん? わしに言ってみよ。
いや、言うな。何も言うでない。わしは、この先お前がどんな道へ進もうが、お前だけを見つめ続ける。お前が今日、一世一代の大仕事を無事に終え、そのあと、共に舞台に立ったあの乳首丸出し男と、ただならぬ仲になったとしてもだ。否、すでに、あの音響事故をきっかけに、誰にも立ち入る事の出来ない絆を、奴と築いたのだとしてもだ!
なに? 馬鹿を言うな、泣いてなどおらぬ。眼から乳液が零れただけだ。器用であろう? わしは気前が良いのだ。わしは、そういう男なのだ。お前が、鹿男やモミアゲ怪人と接吻をした時も、わしは至って冷静だったぞ。
サロメ、サロメ… ああ、わかっておる。お前も、いつかは誰かと一緒になる。それでも、わしはお前だけを見つめ続けるであろう。お前の座った場所に腰掛け、変態仲間と並んで写真を撮るであろう。お前と眼が合っただけで舞い上がり、声を掛けても返事は無い。お前とわしは、ずっとそんな関係だ。
ああ、サロメ、サロメ… お前は、わしら変態の心が弱った時に見上げる、月なのだ。そして我々は、月並みな変態だ。わしらは、いつも、お前から、希望という名の褒美を貰っておる。これ以上、わしらがお前に望むものは、もう何もない。
だが、もはやお前は、望めば何でも手に入る。お前は、あくなき挑戦を続け、努力を重ね、今、その地位を築いたのだ。さあ、申してみよ。何が欲しい? ん? 何でも手に入るのだぞ? 何でもだ。わしに言ってみよ。そうすればもう、お前のものだ。
「かわたべの乳首をちょうだい」
…ありがとう(涙)…
男のわしに乳首は必要無いとお前は思っているやも知れぬが、それはとんでもない誤解だ。授乳以外にも、乳首には使い道があるのだからな。乳首には、他にも重要な使い道があるのだ。
例えばだと? 例えば、それはお前、先週、新宿で… いや、知らぬ、知らぬ。わしは新宿などという場所へは行っておらぬ。行ったかも知れないが、憶えておらぬのだ。
違う、違う、そんな事はどうでもよいのだ。わしは新宿の話などしていない。わしは最近、ボクサー・ブリーフ党だ。長らくトランクスだったが、隙間無く密着する方がわしの性に合っている事に気づいたのだ。それに… 何を言おうとしてた? ん、何だった?
そうだ、お前は乳首など欲してはおらぬ。お前は、わしを困らせようとしているだけだ。わしは、お前に何でもやると誓った。しかし、乳首はいかん。乳首だけはいかんのだ。
そうだ、マジンガーZのフィギュアをやろう。超合金だぞ? 『太陽にほえろ!』のDVDはどうだ? あのドラマから刑事魂を教わったと言っておっただろう。着信音だって『太陽にほえろ!』のテーマだったではないか。
「わたしは、かわたべの乳首が欲しいの」
ならぬ、ならぬ、それは出来ぬ。良いか、サロメ、冷静にならんとな、ん? 冷静になるべきだぞ、違うか? お前は何もわかっていない。わしは乳首を二つしか持っておらぬ。たった二つの乳首で何が出来る? 何の悦びがあるというのだ? 何もない。駄目だ、駄目だ、そんなものを欲しがってはならん。
「かわたべの乳首を」
わかっておらんな、お前は。確かにわしは、お前を見つめすぎた。この一年半、わしはお前ばかりを見つめておった。お前の美しさは、わしの心を掻き乱した。お前の強い眼差しに、わしは心を奪われた。そして、わしはお前をあまりに見つめすぎたのだ。
おお! おお! 酒だ! わしは喉が乾いた。わしは今、ボクサー・ブリーフを穿いておる。お前も工藤ジュンを名乗っている時は、ブリーフを穿いておったのだろう? あっ、こら、蹴るな、蹴るでない。お前は、自分の蹴りの破壊力がわかっていない。むやみに人を蹴るもんじゃない。
あ、こら、痛い、痛い、わっはっは! もうちょっと下だ。そう、そこ、そこを踏んでくれ。優しく、時に強くだ。そう、いいぞ、そのまま、うひひひ…
どうだ、気持ち悪いか? お前は、こんな気持ち悪い人間の乳首を手にして嬉しいのか? 気持ち悪い人間の乳首は、たったの二つとは言え気持ち悪いであろう? どうだ?
「かわたべの乳首をちょうだい」
お前はわしの話をまるで聴いておらんのか? わしだって恥ずかしいのだぞ? まあ落ち着け、落ち着くのだ。わしか、わしは至って冷静だぞ。まったく冷静そのものだ。
いいか、よく聴け。お前は気がついておらぬかも知れんが、お前の身の周りは変態だらけだ。お前が誰と一緒にいようとお前だけを見つめ、お前が立ち寄った場所を後から訪れては、何枚も写真を撮る。お前は、まさか、その変態どもから声を掛けられて、返事などしてはおらぬだろうな? はーい、なんて。まさか、はーい、なんて。
ならぬ、ならぬ、わしが声を掛けても、お前は返事をせなんだ。それで良いのだ。返事などしてはならぬ。変態どもは、無視するに限る。だが、この次にわしが声を掛けた時には、何か言っても良いぞ。わしが許そうではないか。ん? わしに言ってみよ。
いや、言うな。何も言うでない。わしは、この先お前がどんな道へ進もうが、お前だけを見つめ続ける。お前が今日、一世一代の大仕事を無事に終え、そのあと、共に舞台に立ったあの乳首丸出し男と、ただならぬ仲になったとしてもだ。否、すでに、あの音響事故をきっかけに、誰にも立ち入る事の出来ない絆を、奴と築いたのだとしてもだ!
なに? 馬鹿を言うな、泣いてなどおらぬ。眼から乳液が零れただけだ。器用であろう? わしは気前が良いのだ。わしは、そういう男なのだ。お前が、鹿男やモミアゲ怪人と接吻をした時も、わしは至って冷静だったぞ。
サロメ、サロメ… ああ、わかっておる。お前も、いつかは誰かと一緒になる。それでも、わしはお前だけを見つめ続けるであろう。お前の座った場所に腰掛け、変態仲間と並んで写真を撮るであろう。お前と眼が合っただけで舞い上がり、声を掛けても返事は無い。お前とわしは、ずっとそんな関係だ。
ああ、サロメ、サロメ… お前は、わしら変態の心が弱った時に見上げる、月なのだ。そして我々は、月並みな変態だ。わしらは、いつも、お前から、希望という名の褒美を貰っておる。これ以上、わしらがお前に望むものは、もう何もない。
だが、もはやお前は、望めば何でも手に入る。お前は、あくなき挑戦を続け、努力を重ね、今、その地位を築いたのだ。さあ、申してみよ。何が欲しい? ん? 何でも手に入るのだぞ? 何でもだ。わしに言ってみよ。そうすればもう、お前のものだ。
「かわたべの乳首をちょうだい」
…ありがとう(涙)…